クリーン化のことを色々解説してきましたが、これらの多くはクリーンルームに関わることです。そのクリーンルームのことを理解していないと、クリーンルームを良い環境にし、維持していくことができません。前回に続いて、下図により解説を行います。
図1.クリーン化の進め方 クリーンルームとは(定義)
社員は出社すると、まず一次更衣室で社服に着替えます。(過去、いろいろなところに訪問した時、クリーンルームを保有している企業であっても、社服がない、あるいは更衣室がなく社服で出社するところもありましたが、できれば設置が望ましい。その理由は、なぜ更衣室があるのかのところで説明しました。)
そして、クリーンルームに入るには、二次更衣室で防塵衣に着替え、エアシャワーを浴びて入室します。クリーンルームにはHEPAフィルターを介して清浄度の高い空気が供給されています。清浄度が高い層流方式のクリーンルームでは、フィルター性能がさらに高いULPAフィルターが採用されています。その空気は、ダンパー、あるいは床、その他を経由して排出、または回収されるのです。生産設備内の空気は排気ラインを経由して、屋外に排出されます。
パスボックスは、部品、製品などで、余り大きくないものの出し入れ時に使います。小さなものを出し入れするのに、いちいち大きな扉を開閉していたのでは、その都度、室圧も大きく変化してしまうからです。小さな空間だが、清浄度を保つ工夫がされています。パスボックスから持ち込む場合も、きちんとクリーニングしてからにします。また、そのパスボックス内も定期的な清掃が必要です。
更衣室の考え方はすでに説明しましたが、クリーンルームも同様に、いきなりきれいな部屋に入るのではなく、外気の取入れから徐々に清浄度を高めていきます。逆には汚れを徐々に希釈してゴミの持ち込みを少なくしていく考えがあります。ものづくりのクリーンルームは、室圧を高め、ゴミが寄ってこないようにしています。これとは別に、特殊な例ですが、室圧を下げて管理しているところがあります。
余談ですが、2002年ごろSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生しました。
これが広がり始めた時、あのウイルスが日本に上陸したらどうなるのか。室圧を下げて感染者を隔離できる病室がどのくらいあるのか調べたところ、ほとんどないということが分かりました。そして上陸したら大変なことになると騒がれました。幸い日本に上陸しなかったので、その後あまり報じられなくなりました。
のど元過ぎれば・・ということでしょうか。COVID-19では対応に油断があったように感じます。結局は入ってきてしまうのですが、予防、予測をして手を打つのと、拡散してしまったものを抑えるとでは、被害の大きさも違っていただろうと思います。
この点は、設備管理では予防保全、健康管理では、予防接種、安全関係では、火災予防週間など、いずれも予防が重要なことを説いています。広がってしまってからでは、様々なロスや損失が計り知れないので、早いうちに少しでも対応したいからです。
新型コロナウイルスが中国で発生したという報道がされ始めた昨年1月、東京でセミナーを実施しました。
クルーンルームの定義の説明の中に、この室圧を下げて管理しているクリーンルームがあることも参考に話しました。私は、SARSの時の記憶があったが、それ以外にも大きなものがいくつかあったので、発生したのは中国だが、対岸の問題ではなく、危機感を持つこと、油断しないことが必要だという話を付け加えました。
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