ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、今回からクリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。
1. はじめに
ここからは、クリーン化のことをわかり易く説明します。ものづくり企業、およびその現場では、クリーン化、安全、人財育成は必要不可欠な3点セットと考えています。それだけにとどまらず、日常の生活の中でも使えるものが多いです。
お読みいただくと、ああそうかと感じることも多いでしょうし、理解しやすいと思います。理論理屈から入ると、堅苦しい、難しいと思って、すぐに活動は停滞してしまいますが、普段と違った角度、方向から日常生活、会社生活等を考えられることができ、新たな親近感が得られると思います。
私は在社中、社内では変わった人だと言われました。また、社外の企業訪問でも、あなたの会社のカラーを感じない人だと言われることが多々ありました。従って私のこれまでの経験、体験、そして考え方を紹介し、どのような人間なのかを知っていただいた上で、作り上げてきたクリーン化をご理解いただきたいと思い、これまでの経歴を紹介してきました。
私の生きて来た背景が、このクリーン化、人財育成に辿り着いています。人それぞれに背景は違うので、私の考えとは違う方もいるでしょう。従って、そのまま取り込むことはできないのかも知れません。ただ、今後のものづくり企業のクリーン化への取り組みや、人財育成の参考、活用できることがあるかも知れません。
強い現場づくりや、みなさんのこれからの人生設計に役立つことが、多少なりともあるのなら嬉しいことです。私の性格上、本題から外れる話題や余談もたくさん含んでいます。話が逸れることが多いと言うことは、それぞれと繋がりが多いと言うことで、その先には日々の暮らしと直結する事例が多いと言うことでしょう。そのことをお含みいただき、お読みください。前置きが長くなりました。
2. クリーン化とは
クリーン化の始まりやクリーン化とは何かから始めます。
すでに長年にわたりクリーン化活動に取り組んでいるところの皆さんも、ここでもう一度見直す機会としていただきたいと思います。特に、経営者、管理監督者、ものづくりの現場以外の部門の方もお読みください。漠然とイメージしたり、人ごとになっていると良い方向には行きません。それぞれの立場は違っても、全員が当事者なのです。また、クリーンルーム保有の有無に関わらず、共通の考え方ができます。
(1)クリーン化と言う言葉を考える
“クリーン化の原点”から話を始める理由は、今でも“クリーン化とは、掃除のことでしょう”という先入観をお持ちの方が多いと感じるからです。これは、間違っているわけではなく、クリーン化という言葉、その意味が特定の分野に限られて使われ、一般には普及、浸透していないのです。その言葉の背景を知らず、表面だけで想像してしまうのだろうと思います。
一方で、道路や海岸のクリーン活動という言葉から、綺麗にすることの連想や、イメージができ、そして掃除に繋がるのでしょう。こではクリーンルームを保有している企業で言う、『クリーン化』について説明します。
(2)ものづくり企業におけるクリーン化
ものづくり企業におけるクリーン化は、お金をかけずにできる利益向上活動であり、企業体質強化、業績改善に直結すると言われてきました。これは企業競争力の根幹と言われ、その技術とノウハウは長い間門外不出となっていました。恐らく今でもそうでしょう。
企業競争力向上のノウハウゆえ、他社には手の内を見せない、教えないということです。従って他社からの技術やノウハウの入手は難しいが、それで諦めてしまうのではなく、日々工夫、改善し、それを積み重ね、自社独自の技術を確立し、体質強化に結び付けることが重要です。自社独自の技術やノウハウ構築は、自社の特色が出るので定着します。
例えば、自社で苦労し、築き上げてきた技術、ノウハウを、安易に同業他社に公開してしまうと、製品品質や価格に差がなくなり、競争力は低下してしまうでしょう。そうならないよう自社独自の技術を確立し、強い現場を構築、他社に負けないものづくり基盤を目指していくことが重要です。そのことを理解している企業では、クリーン化を重要な活動に位置づけ、日々着々と技術を蓄積、継承しています。
逆に、企業競争力の根幹ゆえ、例え自社のサプライチェーンであっても公開して貰えないとか、指導して貰えなかったと言う経緯があります。これは技術、ノウハウの流出を防ぎ、自社のものづくり基盤を強化して行くことがメリットですが、反面、サプライチェーンの成長には繋がらないのです。
そして、全体の足を引っ張ることも考えられます。特に、乱流方式のクリーンルームをお持ちの企業は大多数ですが、クリーンルームを適正に管理されているところは少ないでしょう。