クリーン化について(その121)人財育成(その22)教育を始めた時の失敗例

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クリーン化について(その121)人財育成(その22)教育を始めた時の失敗例

 

クリーン化について(その120)人財育成(その21)の続きです。

 

◆ 教育を始めた時の失敗事例

教育を始めた時、自分なりに考えた内容を用意し、手始めに、ある部門に呼びかけてみた。どの職場でも、管理職や監督者は、良いと言ってくれたので、スムーズに進むと思ったのです。そして当日、幾つかの職場から受講者が集まった。ところが、昨日、今日入社したような若いメンバーばかりだった。

 

問題はこれからです。

このメンバーが現場に戻って、気になるところを改善し始めた。それを見ていた管理、監督者が、「あなた、それをやると何が良くなるの?」と質問してしまったのです。まだ理解ができていない、やってみないとわからないと言う人たちですから、すぐには説明できません。そして説明できないことはやらないのです。折角興味を持ってくれたのに、逆効果でした。やってみて実感することもあるでしょう。また上司は、まず褒めると言うことをすれば、良い方向に行ったのにと思いました。

 

管理、監督者が、クリーン化は歩留まりを改善する活動だろうと漠然とは持っていたでしょう。でも考えていることがまちまちであり、監督者同士でも、そして現場メンバーとも食い違いが生じてしまったのです。良く考えてみると、教育するには順番があると言うことです。教育は上位職から始めなかったという失敗事例です。教育は、基本から、そして上層部から始めるということが如何に重要かを痛感した。

 

その後、クリーン化、品質改善を目的として山形県の工場(半導体)に赴任。品質保証部に籍を置き、クリーン化教育を立ち上げた。先述の失敗を繰り返さないよう、管理職から始め、順次下ろしていった。現地社長にも聴講を依頼したところ、3時間コースを熱心に聞いてくれた。しばらくして、「あの話は良かった。もう一度聞かせてくれ」と言って再度受講してくれた。トップが背を見せ、また教育の価値を高めてくれたのです。社長が現場に入っても、現場の人と会話する共通の材料、話題ができたのです。

 

このことは、後ほど、“経営者、管理監督者が現場へ足を運ぶことの大切さ”のところでも触れます。トップが背を見せてくれたお陰で、教育、現場の診断、アドバイスが思うようにできた。また、全体を見ていた本社役員も、クリーン化の必要性をよく知っていたので、関係拠点すべての教育、現場診断、指導の支援をもらうことができた。つまり足並みを揃えることができたのです。

 

教育実施中は、受講者の様子を確認し、理解しているか、話は伝わったかを確認している。上手く伝えられていないと感じた時は、事例を多く引き出し、見方を変えて進めてきた。一人でも多くの方に理解してもらいたいという思いからです。

 

加えて終了時アンケートを実施、受講者の声を把握するようにした。教育は一方的にやるのではなく、双方向にし、価値を高めようと考えたからです。これを参考に、絶えずレベルの確認、方向性を考え、修正してきた。はじめは、「これが教育か!」と言う記入もあるのではないかと心配になった。でも受講者の声を真摯に聞くこと、そして評価してもらうことが必要だと思い、少々怖さを感じながらも、それが本当の教育だと思い勇気を持って実施した。単にやったと言うのではなく、両方向の場にできたことが良かった。

 

実際には否定的な内容はなく、伝わっているかの確認や参考になることが沢山あった。現場で拾った事例を教育に繁栄させることで、理解の促進に努めた。さらに総務部門と相談、クリーン化教育を全員教育とし、社内広報で受講者の募集をした。また、教育履歴にも残すようルール化した。

 

アンケートで質問があればもちろん精一杯回答してきた。結果的に赴任地、および国内、海外、取引先などを含め、在社中に受講者は4,500名超。様々な相談や考え方から、多くの人と交流できた。これは全て私の勉強の場だと捉えている。

 

【情報出しの工夫】

そのうちに、もっと沢山の人に知ってもらいたい。考えてもらいたいと、寺子屋のような教育を考えた。これは松下村塾をイメージした。対面しながら各拠点などのクリーン化担当を集めて直に話をしたいと思ったのですが、物理的には無理ですね。そこで、電子版寺子屋“クリーン化塾”として開講した。これを全社広報により毎週発行した。時差に関係なく国内、海外に同時に公開できた。クリーン化教育の不足分の補完、補充の意味もあった。海外では、通訳が現地語に翻訳し、職制やクリーン化担当などに配信してくれた。原稿を執筆し、毎週月曜日の朝に発信した。ここまではスムーズだったが、また予想しない問題が起きた。

 

月曜日から火曜日にかけ、国内、海外から沢山の質問や感想が寄せられた。これに対しても反応し...

クリーン化について(その121)人財育成(その22)教育を始めた時の失敗例

 

クリーン化について(その120)人財育成(その21)の続きです。

 

◆ 教育を始めた時の失敗事例

教育を始めた時、自分なりに考えた内容を用意し、手始めに、ある部門に呼びかけてみた。どの職場でも、管理職や監督者は、良いと言ってくれたので、スムーズに進むと思ったのです。そして当日、幾つかの職場から受講者が集まった。ところが、昨日、今日入社したような若いメンバーばかりだった。

 

問題はこれからです。

このメンバーが現場に戻って、気になるところを改善し始めた。それを見ていた管理、監督者が、「あなた、それをやると何が良くなるの?」と質問してしまったのです。まだ理解ができていない、やってみないとわからないと言う人たちですから、すぐには説明できません。そして説明できないことはやらないのです。折角興味を持ってくれたのに、逆効果でした。やってみて実感することもあるでしょう。また上司は、まず褒めると言うことをすれば、良い方向に行ったのにと思いました。

 

管理、監督者が、クリーン化は歩留まりを改善する活動だろうと漠然とは持っていたでしょう。でも考えていることがまちまちであり、監督者同士でも、そして現場メンバーとも食い違いが生じてしまったのです。良く考えてみると、教育するには順番があると言うことです。教育は上位職から始めなかったという失敗事例です。教育は、基本から、そして上層部から始めるということが如何に重要かを痛感した。

 

その後、クリーン化、品質改善を目的として山形県の工場(半導体)に赴任。品質保証部に籍を置き、クリーン化教育を立ち上げた。先述の失敗を繰り返さないよう、管理職から始め、順次下ろしていった。現地社長にも聴講を依頼したところ、3時間コースを熱心に聞いてくれた。しばらくして、「あの話は良かった。もう一度聞かせてくれ」と言って再度受講してくれた。トップが背を見せ、また教育の価値を高めてくれたのです。社長が現場に入っても、現場の人と会話する共通の材料、話題ができたのです。

 

このことは、後ほど、“経営者、管理監督者が現場へ足を運ぶことの大切さ”のところでも触れます。トップが背を見せてくれたお陰で、教育、現場の診断、アドバイスが思うようにできた。また、全体を見ていた本社役員も、クリーン化の必要性をよく知っていたので、関係拠点すべての教育、現場診断、指導の支援をもらうことができた。つまり足並みを揃えることができたのです。

 

教育実施中は、受講者の様子を確認し、理解しているか、話は伝わったかを確認している。上手く伝えられていないと感じた時は、事例を多く引き出し、見方を変えて進めてきた。一人でも多くの方に理解してもらいたいという思いからです。

 

加えて終了時アンケートを実施、受講者の声を把握するようにした。教育は一方的にやるのではなく、双方向にし、価値を高めようと考えたからです。これを参考に、絶えずレベルの確認、方向性を考え、修正してきた。はじめは、「これが教育か!」と言う記入もあるのではないかと心配になった。でも受講者の声を真摯に聞くこと、そして評価してもらうことが必要だと思い、少々怖さを感じながらも、それが本当の教育だと思い勇気を持って実施した。単にやったと言うのではなく、両方向の場にできたことが良かった。

 

実際には否定的な内容はなく、伝わっているかの確認や参考になることが沢山あった。現場で拾った事例を教育に繁栄させることで、理解の促進に努めた。さらに総務部門と相談、クリーン化教育を全員教育とし、社内広報で受講者の募集をした。また、教育履歴にも残すようルール化した。

 

アンケートで質問があればもちろん精一杯回答してきた。結果的に赴任地、および国内、海外、取引先などを含め、在社中に受講者は4,500名超。様々な相談や考え方から、多くの人と交流できた。これは全て私の勉強の場だと捉えている。

 

【情報出しの工夫】

そのうちに、もっと沢山の人に知ってもらいたい。考えてもらいたいと、寺子屋のような教育を考えた。これは松下村塾をイメージした。対面しながら各拠点などのクリーン化担当を集めて直に話をしたいと思ったのですが、物理的には無理ですね。そこで、電子版寺子屋“クリーン化塾”として開講した。これを全社広報により毎週発行した。時差に関係なく国内、海外に同時に公開できた。クリーン化教育の不足分の補完、補充の意味もあった。海外では、通訳が現地語に翻訳し、職制やクリーン化担当などに配信してくれた。原稿を執筆し、毎週月曜日の朝に発信した。ここまではスムーズだったが、また予想しない問題が起きた。

 

月曜日から火曜日にかけ、国内、海外から沢山の質問や感想が寄せられた。これに対しても反応しないと、クリーン化そのものへの興味も薄れると思い、一つひとつに返信していた。わからないことがあれば、会社帰りに、近くの東北公益文科大学の図書館で調べたりしていた。困ったのは、次の原稿執筆が間に合わなくなることだった。ただ、楽しみにしている人もいたので、日々早朝出勤し執筆、また終業後や休日も執筆していた。定年退職日までに120号に到達した。休刊したのは、東日本大震災の時、2回だった。

 

次回に続きます。

 

【参考文献】 
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
    同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
    同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

 

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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