ステップ2の発生源対策・改善の実施から、今回は、ゴミの見方について解説します。
図.クリーン化活動のステップ展開
【ゴミの見方】
クリーンルーム内でゴミを簡易に見る方法として、懐中電灯を使い斜光で観察する方法があります。どんなに小さなゴミであっても形があります。懐中電灯で斜めに光を当てることで、そのゴミに影ができ存在を確認しやすくなります。
例えば真夏の昼、外に出ても真上からの太陽光では自分の影はできませんが、夕日などのように斜めから太陽光が当たると、自分の影が身長の何倍にも大きく見えます。この原理を使うわけです。人が懐中電灯を使い、肉眼で見える大きさは、およそ10ミクロンくらいまで、また良く訓練された人は3ミクロンくらいまで見えるだろうと言われます。
訓練された人は、懐中電灯での斜光の使い方が違うのです。傾ける角度、光を遠ざけたり近づけたりと、より影を大きくし確認しやすい様々なノウハウを持っています。一方で、懐中電灯も光が広がらない、集光タイプが見えやすいです。
【落下塵の観察】
懐中電灯を使い斜光で観察する方法は主に落下塵の確認に適しています。作業台、製品容器、設備、設備カバー、そして床などの平面上にあるゴミです。この使い方を応用すると、壁面、側面などに付着しているゴミも観察できます。
層流式のクリーンルームであっても、ゴミは無いわけではなく、場所によっては多くのゴミが確認できます。ゴミが落下する場合は、重力沈降と呼ばれるように、ある重さを超えたものが落下します。それよりも小さなもの、浮遊しているものであっても、静電気による吸着もあるので、様々な見方をして経験値を高めましょう。
【浮遊塵の観察】
参考に浮遊塵の見方も紹介します。早朝、雨戸を少し開けた時、差し込む光の中に小さなゴミが浮遊しているのを見たことがある方も多いでしょう。この他映画館でもスクリーンに向かう光の帯の中には、おびただしい浮遊塵を確認できます。プレゼンなどで使うプロジェクターから発せられる光の帯の中にも、同じように浮遊塵が見えます。
このことは、イギリスのジョンチンダル(1820年~1892年)という物理学者が、“光の通り道に何か障害物があれば、白く濁って見える”ことを発見した。その名を取ってチンダル現象と呼ばれています。
落下塵であっても、光を当て、影をつくりその存在を確認するとことは、このチンダル現象の応用です。このように、私たちの身の回りにはたくさんのゴミ、微粒子があります。それを自分の目で確認することで、清掃の仕方も変わります。お金をかけずに、知恵と工夫で活動できます。
クリーンルーム内で、懐中電灯を使う理由は、上記の他、持ち運びのしやすさ、人が入りにくいところでも観察ができるなどのメリットがあります。
【事例】
顕微鏡のテーブル(載物台)はステージの裏や周辺のベルトによって、X、Y、Z方向への移動が素早くでき、対象物を確認することができます。対象物の迅速な移動が可能ですが、その分劣化も早いです。普段見ないところほど、劣化の進行に気づかないので、使用頻度の高い顕微鏡から順次確認してみましょう。
ベルトはロープ状のものだけでなく、噛み合わせて動くものもあり、その部位によって様々な劣化があります。ベルトが削れると摩耗粉が出ます。つまりベルトが劣化しているので、切れてしまうかも知れません。様子を見ながら、早めに手当てする、予防保全をしておかないと、パーツの在庫がないなどで使えないこともあります。
また削れて発生した摩耗粉は、比較的大きいので、それが落下、飛散し付近の製品品質にも影響が出ることが考えられます。
品質問題が出てから原因を探るのではなく、それらも着眼点に含んだ定期的な現場パトロールを実施しましょう。懐中電灯を活用し、未然防止、予防保全に努めることも、製品製造面でのロスを防止、また品質向上への貢献に繋がります。
【懐中電灯を使う場合の注意点】
最近...
また、写真技術を使って製品加工している工程では、天井灯などと同じ黄色のフィルターを付けて確認します。通常の光は紫外線です。この紫外線をカットするのが目的です。昔のカメラはフィルムでした。フィルムをカメラから引き出す時、必ず巻き戻しをします。自然光(紫外線)に当てないようにしているわけですが、これと同じことです。
次回に続きます。