前回のクリーン化について(その129)に続き、クリーン化教育について続けます。
前回は教育の失敗事例や“レベルを揃える”について記しました。実際にクリーン化教育を実施する場合は、基本、基礎から始めることが大切だと思います。
2024年の半導体業界は、大規模な工場が同時期にたくさん建設されてきています。ただ人財不足も大きな懸念です。過去の経験者は少なくなっています。反面、企業間の競争は激しくなって行くでしょう。こうなると、未経験者であっても大切に育てていくことが重要になります。また、それぞれに繋がるサプライチェーンも、レベルを上げるなど対応が必要です。途中でチェーンが切れるようなことがないようにしたいものです。
半導体各社の製品の線幅はナノメートルのレベルを目指しています。これらの製品の実現のため、半導体前工程の技術を極限まで高めることに注目がされていますが、前工程だけでなく、サプライチェーンの全ての企業が結束し、それに立ち向かうことが重要です。
そのサプライチェーンの中でも、クリーンルームを保有している企業は多いでしょう。ただし、クリーンルーム管理などのさまざまな技術をきちんと保有しているでしょうか。作る物に対し、高い技術を保有し、対応して行く、いわば水面下、ベース、土台の部分に相当するわけです。そこに、クリーン化技術は必須です。そしてさらにレベルを高めて行くことですね。立ち止まっていては競争力は薄れるでしょう。しかし、基本が無いとか、曖昧に始めてしまって、途中で壁にぶつかるかも知れません。壁にぶつかったら、基本に戻れと言いますが、その基本が無いと、戻るところがないです。
クリーン化の重要さは、わかっているようで、実は良く理解されていないと言う例は多いようです。また現場がやることだという意識も強いのです。技術のような、技能のような中途半端な位置づけのところもあるようです。それでは当事者意識が不足してしまいます。社員全員が、それぞれの立場で行動することで、その先にある強いサプライチェーンの実現に繋がると考えています。
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昔、鹿児島に行った時、薩摩藩の話を聞いたことがありました。薩摩藩には優秀なリーダーもいたが、それだけではなく、先輩の藩士が後輩の藩士を育てる仕組みがあったとのことです。先輩も力量が無いと後輩を育てられないので、自身もよく学び、成長していた。それを後輩へと繋げていたとのことです。こうなると、結束力、意思疎通などメリットはあったと思います。
ちなみに、私が赴任した山形県酒田市に飯盛山と言う小さな山があり、その麓に南洲神社がありますが、そこの庄内藩が藩士育成のため、鹿児島の薩摩藩に藩士を派遣したそうです。現場で人を育てる、今で言う人財育成・交流の事例でしょう。ところが西南戦争の時、庄内藩は新政府側につき、薩摩藩と敵対関係になったわけです。この時、薩摩藩では、庄内藩からの派遣人財にこの戦争は庄内藩士には関係ないので、庄内に帰るよう促したそうです。ところが、庄内藩からの派遣人財は、これだけお世話になったのでと、薩摩藩と一緒にこの戦争を戦いました。そして、この戦いで亡くなった庄内藩士は、鹿児島市内の墓地に薩摩藩士とともに手厚く葬られたと言います。
クリーン化も、先輩がしっかり身につけ、後輩を指導育成して行くことができるようにしたいものです。OFF-JT(集合教育)ができるだけでなく、OJT(現場で指導)ができるかどうかで、その現場、企業の体質の強さが変わってきます。OFF―JTだけで、上手くいかなければ叱責する、と言うような育て方では人は伸びません。言うだけ出なく、やってみせられなければ、人はついてこないでしょう。
新入社員には、これから仕事を始める心構えとしてのクリーン化教育を実施しておきましょう。新入社員は、入社時の教育はたくさんあるでしょうから大変でしょう。従って慣れた頃、また基本を繰り返し実施する。それを教育実施記録に残すことも必要です。個人個人のレベル把握や、異動時の教育履歴も把握しましょう。客先監査があれば、教育履歴も確認されることがあります。指導せずに数年経ってから基本を教えても興ざめです。最初が肝心です。
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クリーン化のことを知らず...