人財育成のところで度々話題にしている山本五十六のことばの重要さを再度見直して見よう。
「やって見せ、言って聞かせて、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かじ」と言うことばです。“やってみせる”とは手本を示す事です。理論、理屈で指導した気になっていないでしょうか。指導される側から見ると、口ばっかりで、自分だってできないじゃないか、と言う話もしばしば聞きます。ただそれをダイレクトに言うと、否定するようになってしまうので、正面から向かうことはしないのです。ところが、やってみせられることは、お手本を示す事で、そのような反発はなく、理解しやすいのです。そして受け入れてくれるようになるのです。
次の、“言って聞かせて”、はやって見せたことを、ポイント、急所を押さえながら、説明し、反応や表情を確認するのです。その後、“やらせてみる”ことで、本当にできるかどうかを確認するのです。最後の仕上げが、“褒める”と言うことです。
この3つは、指導育成の手順、人を育てる手順です。どれも省くことはしないことです。
【この連載の前回:クリーン化について(その103)人財育成(その8)へのリンク】
最近は人手不足という事もあるが、即戦力ということばも良く聞くようになった。即戦力と言っても、やはり、この3つのポイントはきちんと押さえることです。急ぎすぎて、短絡的になってしまうのでしょうが、急がば回れ、とか、急いては事をし損じると言うように、きちんとやるべき事は押さえることです。このことばだけで、いきなり様々な現場に放り込んでも、たやすく戦力にはならないのです。その結果、思っていた事と違った結果が出ることもあります。もしかすると、大きな失敗に繋がるかも知れません。あるいは取り返しのつかない問題が起きるかも知れません。
そして、そんなこともできないのか!とか、見下ろすような口調で怒鳴ったりする場面も見てきました。それまで育ってきた環境が理解されていないのです。
ここには “怒る・怒鳴ると叱る” の差が出てしまいます。怒る、怒鳴るは感情をあらわにすることです。この場合、感情が表に出てしまい、自分をコントロールができないのです。また、叱るは、その人に良くなってもらいたいという思いを込め、冷静に導くことです。この使い方を間違えると、人が離れていくのか、付いてくるのかの違いが出てしまいます。
私もいろいろ経験してきました。その時は、自分が素直になれないのです。それが表情に出てしまうと、反抗的だと言うことになってしまいます。それでは、その対象者の良いところなどは引き出すことができません。
最近、スポーツの分野でも、指導のあり方が問題になっています。罵倒したり、体罰を与えると言うことです。体罰などは、その事を省いて行動してしまうのです。これは厳しい指導とは別だと考えています。折角、やりたいことをやろう、その夢を叶えようとしてその分野に飛び込んだのに、その夢や希望が絶たれ、去って行く事もあるのではないだろうか。
指導すると言うことは、翻って自分も学ぶ、育つと言うことだと思います。いつも同じやり方ではなく、その人をよく見ながら、工夫して指導して欲しいのです。
野球で言うと、直球だけしか持ち玉がないのでは、指導される側も、いつも同じ事を言われているだけで成長は期待できません。そして、思うように行かない、育たないと、同じ事を語気を強めて繰り返すだけになります。指導される側は、またかと思いながら、その時間、頭の上を過ぎるのを待つと言うことにならないでしょうか。直球でだめなら、違う球種で攻めて見る。その対象者を良く理解し、相応しい教え方を探っていく事が大切です。つまり指導する人も引き出しをたくさん用意できているかです。
俺もこれで育...
クリーン化では、“多面的に見る、考える”と言うことの大切さを記しました。人を教える、指導すると言うことは、その上に立つ人も絶えず学ぶ、考える必要があります。これは、薩摩藩の、先輩が後輩を育てる仕組みと合致します。少子化が進み、人との接触の機会も減ってきましたが、それ故、人との関わりは大切にしたいものです。
次回に続きます。
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