毎年、5月をむかえると新入社員が入社して1ヶ月が経ちます。現在社員教育中のところもあれば、現場で即戦力として働いている場合もあるでしょう。今回も、人財育成についてです。私はセミナーや講演会などで、クリーン化の話をする時は、次の3点を強調しています。
- 自社、自分の問題として捉えること
- 先を考えること
- なぜを考えること
【この連載の前回:クリーン化について(その104)人財育成(その9)へのリンク】
1.自社、自分の問題として捉えること
自社、自分の問題として捉えませんと人ごと、よそ事で、本当の活動にはならないからです。これは、在社中、長年現場を歩いてきて、つくづく感じたことです。
例えば、企業の規模にもよりますが、経営者や管理職の方の中に「日頃から厳しく言っている」と口にされる方もいます。ところが、実際に現場に入ってみると、作業者からは、“現場には入らない、現場を知らない”と言う話も聞きます。経営者や管理職の方は言っているだけで、現場には入らない、現場を知らないのです。
これは指導のうちには入らないでしょう。すると社員の方も現場で頑張っても、その苦労、努力を見て貰えないので、やり甲斐は感じなくなってしまいます。これでは、会社側も社員の側も人ごとです。そのような場合、良い品質の作り込みや、企業の価値はなかなか創出できないでしょう。
取引先でも、その事はある程度わかっているのではないかと思う時もあります。私がその会社の方、現場の方と短時間に接しても感じるからです。また、ただ作っているだけしか感じない企業の場合、その後取引がなくなってしまう例も見てきました。
“何のために、誰のためにものを作るのか”が見えないからです。
これでは、その企業は成長するどころではなく、存続さえも危うくなります。当事者意識の欠如は、危機感、危機意識も不足するのです。本当に良くしようとするなら、やはり当事者意識がなくては実現しないでしょう。
私は、このコロナ禍、2つのものづくり企業に出会いました。
どちらも、絶えず前に進もう、その雰囲気を経営側、そして現場に至るまで強く感じました。一つは経営の中心に心を置いている企業。もう一つは、当事者意識の必要性を唱えていました。
こちらを何度か訪問するたびに、当事者意識って何だろう。自分も、“自社、自分の問題として取り組む事の大切さ”を話題にしてはいるが、もっと深く考える必要があると改めて考えさせられました。
セミナーや講演会では、当然、クリーン化の部分しか話題にはしませんが、世の中に目を転じると、国民や市民のお手本であり、指導する立場にある人が、飲酒運転、あるいはマナーやモラルに欠けると言う事例が目に付きます。当事者意識の欠如です。
所属上長の会見では、規律を見直すとか、教育をし直す、徹底するなどのことばが並びます。ところがその舌が乾かないうちに、同じ事が繰り返されます。これらを見るに付け、本当の当事者とは誰なのか、その意識はあるのだろうかとつくづく感じます。もう一歩踏み込む、核心に迫ることが必要ですね。
2.先を考えること、なぜを考えること
先を考えるという部分では、格の高い方、もうすぐ定年という方もいますが、社会的に信用を損ねてしまうだけでなく、退職金を始め、その後の生活の糧も失ってしまうのです。再就職も難しいでしょう。なぜ飲酒運転はいけないのか?を指導する立場の人でさえ、なぜ法律があるのか、本当の理由を理解できていないのです。
法律、決まりがあるから、と言うところから指導、教育が始まっていないでしょうか。そしてちょっとだけなら良いだろう。あるいは自分は大...
ここに当事者意識の不足があるのです。
その後に後悔しても取り返しはできないのです。しかも自分だけでなく、その影響は大きいのです。その先を考えることができたなら、防げることかも知れません。クリーン化だけでなく、人財育成全般に、自分の問題として捉える、先を考える、なぜを考えることは重要なキーワードになると考えています。
次回に続きます。
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