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ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。クリーン化について(その146)クリーン化の基礎(その8)の続きです。
◆ クリーン化の効果を考える
クリーン化で得られた効果について事例を交え解説します。クリーン化の成果、効果で得られた利益をどのように使うか考えてみると良いです。つまり、自社あるいは自分の問題として引き寄せることです。
(1)クリーン化で品質、歩留まり向上、そして利益も向上
クリーン化活動を進める上で、その成果や効果は欲しい。それが具体的に数字などで見えると、活動は継続する。ある半導体製造の前工程の事例からクリーン化の成果、効果について考えてみます。例えば、その工場の一つのラインで、仮に月25億円の売り上げがあったとする(これはイメージしやすい数字にした。現在ではこんな数字よりはるかに多いでしょう)。この時歩留まりが1%上がると、月に2,500万円の純利益が得られる。しかもあまりお金をかけないでできることが沢山ある。
会社が社員を集めて、あるいは上司が部下に対し、「品質向上に努めましょう。すると利益が増えます」 と言うだけでは、社員は“聞いただけ、人ごと、よそ事”で終わってしまうかも知れません。そこで、これらで得られた効果(利益)をどのように使うか考えてみると良い。つまり、“自社や自分の問題として捉えること”が重要です。具体的な項目ごとに解説する。前回の「クリーン化の効果を考える」(1)クリーン化で品質、歩留まり向上、そして...
⑦ 初期対応の失敗は大きな費用と犠牲を招く
ゴミ(パーティクル含む)退治の仕方(手順)は、ゴミの見方のところで触れるので、ここでは簡単な説明に止めます。ゴミ退治の基本手順は、 発生源対策、 飛散防止、 清掃です。
- 発生源対策:元を絶つこと。発生しなければゴミによる品質問題はないわけです。
- 飛散防止:発生してしまっても、そのゴミが飛散、拡散しないように小さな、あるいは狭い範囲で処理する考え方です。
- 清掃:それでも処理ができず拡がってしまったら、清掃で対応します。
クリーン化のゴミ退治の仕方、手順はできるだけお金をかけない手順でもあるのです。もちろん、必ずこの手順というのではなく、発生源対策に時間がかかるので、飛散防止をしながら発生源を抑える、という風に並行する場合もありますね。上記の3つの手順は考え方です。火災の消火も同じですね。発生させない努力、 初期消火(飛散、拡散防止)、それでも拡がってしまったら消防対応になります。
設備の予防保全も同じです。つまり初期の対応を誤れば、費用も犠牲も大きくなるのです。翻って、2020年の新コロナウイルス対策はどうでしょうか。初期対応では防げなかった。その理由は、SARS(重症急性呼吸器症候群)が東南アジアで発生し、それが日本に上陸した場合、感染を防ぐため室圧を下げて管理できる病院、病室の数を調べたところ、国内には殆どないことがわかった。そして、これでは大変なことになると一時大騒ぎになった。実際には上陸しなかったので、その危機感が薄れた。つまり油断したのだと思う。
それを飛散、拡散防止すべきところを、拡散させる策を講じた(GoToなど)ため、多くの感染者が出てしまった。その広い裾野を叩くために、莫大な予算が必要になってしまった。それでもなかなか収拾できないです。また、第1波よりも2波、3波と波が大きくなってきた。元々言われていたことだが、油断の大きさの現れ(油断の曲線、増幅の曲線―このような理論があるわけではなく、私が勝手にそう思っている)だと感じます。
後遺症のすそ野も拡がるでしょう。収拾がつかないとか、自然消滅を待つことになるかも知れません。ここにも様々なロスが隠れています。これも、漠然と捉えるのではなく、自分の問題として真剣に捉え、行動することで、広がり方が遅く、狭い範囲で収まったのかも知れません。
◆ クリーン化を成功させる条件とは
【継続的な活動がやがて大きな成果に 】
クリーン化活動を進めるうえで重要なことを私の経験、体験を基に整理したものです。これは現場や現場に近い部門だけでなく、経営者や管理監督者など会社全体が知っておいて欲しいことです。クリーン化を成功させる条件について、事例を含めて解説します。
(1)経営者、管理監督者の旗振り
“経営者、管理監督者の旗振り”、何といってもこれが最初に来ます。クリーン化はものづくり企業の基盤強化、利益の創出、そして人財育成のツールです。ただし、すぐに効果や成果が表れない活動です。ボクシングで言うと、ボディブローです。
初めのうちは、こんなことをやっている意味があるのかと思ったり、毎日の清掃も、今日は1回お休み(手抜き)、が繰り返しになり、やがてやらなくなってしまう。
そしてせっかく奇麗になり始めた現場が、また元に戻ってしまう。クリーン化に取り組みはじめたにもかかわらず、すぐ挫折するのは、このようなところにも原因があります。クリーン化活動は粘り強く継続することに意味があることを、経営者や管理監督者が理解して旗振り、後押しをすることが重要です。
その役割を負うべき経営者や管理職が、見て見ぬ振りをしたり、支援を怠ると、成果が出ないばかりか、ものづくり基盤の弱体化にも繋がってしまう。現場の方は、上司の行動を良く見ています。表面だけ理解して、成果を急ぐ経営者や管理職の方も多いようです。
“クリーン化は地味に、地道にコツコツやり続けることにこそ価値がある”のです。このことを理解していないと、「昨日種を蒔いたから、今日は芽が出て、明日は花が咲き、その翌日は実がなり、収穫できるはずだ」 というくらいの方もいます。成果を早く出せという経営者です。クリーン化はすぐに成果、効果が見えない活動ですが、継続的に活動を続けることで、やがて大きな成果に繋がる。そのことを理解して欲しいのです。
(2)成果主義との兼ね合い
成果主義では、数字やデータで報告することを求められます。そうなると、要領の良い人は、数字やデータで表現しやすいことになびいてしまうでしょう。反対に地道にコツコツ継続をしている人は、なかなか評価されないのです。このようにすぐに成果が出ないこと、数字、データで表現しにくいことは敬遠され、定着しないので、そのことを経営者や管理監督者がきちんと理解し、その活動の旗振りや後押しをすることが大切です。
次回に続きます。
クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。
【参考文献】
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
同 電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
同 「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年
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