結果系データしかないときの分析とは データ分析講座(その107)

更新日

投稿日

データ分析

◆ 売上や受注などの結果系データしかない時の分析

 ビッグデータの時代というものの、データを眺めてみれば何がビッグなのでしょうか。少なくとも勝手に溜まるデータがビッグになっている、ということがいえそうです。勝手に大きくなっているデータの代表がWebアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関するデータです。そしてどのような企業にもあるのが売上や受注などの結果系データです。今回は「売上や受注などの結果系データしかない時、どう分析する」というお話しです。

1. データ分析: 勝手に溜まるデータは、ほぼ汚い

 先ほど勝手にビッグになっているデータの代表としてWebアクセスログやセンサーデータなどを挙げましたが、勝手に溜まるデータの多くは分析する段階でそのままの状態では使えません。なぜなら、データ分析という観点から考えると汚くて使えないからです。汚いものはキレイにすればいいので、時間さえかければ大丈夫です。

2. データ分析: データは溜めることを意識して

 Webアクセスログは比較的キレイに蓄積されますが、それでもそのままでは分析に利用できません。

 分析のための前処理がかなり必要となりますし、WebアクセスログそのものがそのままExcelで扱えるようなデータ形式でないため、そのための処理が必要になります。Webアクセスログを取得する時、タグをWebサイトに埋め込めば済みますが多くの場合、欲しいWebアクセスログを取得するためには、それなりに実装しなければなりません。分析中、実装ミスに気づくこともままあります。

 ビッグデータの時代とはいえ、結局のところデータは意識して溜めないと溜まらない、という現実は今も昔も変わらないということです。

3. C.L.ハルの「S-O-R理論」

 勝手に溜まるデータの多くが、結果系のデータです。例えばWebアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関するデータも、何かしらの結果を反映したデータです。心理学の世界にC.L.ハルの「S-O-R理論」(Stimulus-Organism-Response Theory)という概念があります。非常にシンプルな概念です。

 「S」(Stimulus)は刺激、「O」(Organism)が有機体、「R」(Response)が反応です。データ分析の世界でも、そのままこの概念を活用することができます。

 結果系のデータは「R」になります。「R」が生まれるためには、「S」が必要になります。例えばマーケティングのキャンペーンは「S」で、「O」は消費者、「R」が売上などになります。

 データ分析ではよく「S」と「R」のデータから「S」と「R」の関係を統計モデルなどの数理モデルで表現したりします。多くの場合「O」がどのようになっているのか分からないからです。

4. 「S」はないが「R」がある場合

 「R」に関するデータは“キレイか汚いか”を考えなければ、結構溜めている企業が多いようです。売上系のデータは事業をする上で必須ですし、Webのアクセスログもタグを埋め込んでおけば何かしらデータが蓄積されます。センサーデータも、センサーを設置すればデータは次々と発生していきます。

 しかし「S」に関するデータは、本当に意識しないと蓄積されません。例えばマーケティングキャンペーンの情報はパワポなどの資料としては残っているけど、データ分析できる形では蓄積されていない。Webもリスティングの運用やSNS施策をWeb系の広告代理店に丸投げしているため、記録されているようで実は分析できる形にはなっていないのです。

 センサーデータも、例えば生産機器の温度が上がったので職人技でボルトを0.001ミリ単位で調整したとか、生産設備のメンテンナンスや工場の掃除など、何を行ったのかといった記録は具体的に残って...

データ分析

◆ 売上や受注などの結果系データしかない時の分析

 ビッグデータの時代というものの、データを眺めてみれば何がビッグなのでしょうか。少なくとも勝手に溜まるデータがビッグになっている、ということがいえそうです。勝手に大きくなっているデータの代表がWebアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関するデータです。そしてどのような企業にもあるのが売上や受注などの結果系データです。今回は「売上や受注などの結果系データしかない時、どう分析する」というお話しです。

1. データ分析: 勝手に溜まるデータは、ほぼ汚い

 先ほど勝手にビッグになっているデータの代表としてWebアクセスログやセンサーデータなどを挙げましたが、勝手に溜まるデータの多くは分析する段階でそのままの状態では使えません。なぜなら、データ分析という観点から考えると汚くて使えないからです。汚いものはキレイにすればいいので、時間さえかければ大丈夫です。

2. データ分析: データは溜めることを意識して

 Webアクセスログは比較的キレイに蓄積されますが、それでもそのままでは分析に利用できません。

 分析のための前処理がかなり必要となりますし、WebアクセスログそのものがそのままExcelで扱えるようなデータ形式でないため、そのための処理が必要になります。Webアクセスログを取得する時、タグをWebサイトに埋め込めば済みますが多くの場合、欲しいWebアクセスログを取得するためには、それなりに実装しなければなりません。分析中、実装ミスに気づくこともままあります。

 ビッグデータの時代とはいえ、結局のところデータは意識して溜めないと溜まらない、という現実は今も昔も変わらないということです。

3. C.L.ハルの「S-O-R理論」

 勝手に溜まるデータの多くが、結果系のデータです。例えばWebアクセスログやセンサーデータ、そして売上や受注などの売上に関するデータも、何かしらの結果を反映したデータです。心理学の世界にC.L.ハルの「S-O-R理論」(Stimulus-Organism-Response Theory)という概念があります。非常にシンプルな概念です。

 「S」(Stimulus)は刺激、「O」(Organism)が有機体、「R」(Response)が反応です。データ分析の世界でも、そのままこの概念を活用することができます。

 結果系のデータは「R」になります。「R」が生まれるためには、「S」が必要になります。例えばマーケティングのキャンペーンは「S」で、「O」は消費者、「R」が売上などになります。

 データ分析ではよく「S」と「R」のデータから「S」と「R」の関係を統計モデルなどの数理モデルで表現したりします。多くの場合「O」がどのようになっているのか分からないからです。

4. 「S」はないが「R」がある場合

 「R」に関するデータは“キレイか汚いか”を考えなければ、結構溜めている企業が多いようです。売上系のデータは事業をする上で必須ですし、Webのアクセスログもタグを埋め込んでおけば何かしらデータが蓄積されます。センサーデータも、センサーを設置すればデータは次々と発生していきます。

 しかし「S」に関するデータは、本当に意識しないと蓄積されません。例えばマーケティングキャンペーンの情報はパワポなどの資料としては残っているけど、データ分析できる形では蓄積されていない。Webもリスティングの運用やSNS施策をWeb系の広告代理店に丸投げしているため、記録されているようで実は分析できる形にはなっていないのです。

 センサーデータも、例えば生産機器の温度が上がったので職人技でボルトを0.001ミリ単位で調整したとか、生産設備のメンテンナンスや工場の掃除など、何を行ったのかといった記録は具体的に残っていないのです。

 要するに「S」と「R」の関係について「S」がないため分析できない。そこで「R」のデータしかない場合、データ分析はできないのかという疑問が湧いてくるかもしれません。

5. データ分析: 「通常か異常か」なら見られる

 売上や受注などの「R」に関するデータない時どうするのかというと、ベタな分析方法は異常検知になります。異常検知であれば「R」に関するデータだけでも分析しようと思えばできます。

 通常の「R」の値と比べてどうかをみるだけですが、季節変動やトレンドなど考えるべき要因も多々あります。例えばキャンペーンであれば多くの場合、通常の売上ではなく売上拡大(異常な売上)を手にするためにやります。この為、売上の異常検知でキャンペーン期間中に「異常値」が検出されなければ「キャンペーンは上手くいっていないかもしれない」とも解釈できます。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
中小製造業のDXへの取り組み(その2)

【中小製造業のDXへの取り組み 連載へのリンク】 1、中小製造業の2つの事業パターン 2、受託製造サービス業へ脱皮する 3、経済産業省DX Se...

【中小製造業のDXへの取り組み 連載へのリンク】 1、中小製造業の2つの事業パターン 2、受託製造サービス業へ脱皮する 3、経済産業省DX Se...


指標設計(KPI設計) データ分析講座(その15)

  ◆ 指標設計(KPI設計)の質が、営業データ活用の成否を決める  「営業データを集計したけど、その後、どのようにすれば営業活動に活か...

  ◆ 指標設計(KPI設計)の質が、営業データ活用の成否を決める  「営業データを集計したけど、その後、どのようにすれば営業活動に活か...


データでビジネス成果を出すときの最大の壁 データ分析講座(その66)

◆ データ活用は日常業務化(運用化)しないと意味はない。その秘密は、業務プロセスの「Before & After」  データ分析している側か...

◆ データ活用は日常業務化(運用化)しないと意味はない。その秘密は、業務プロセスの「Before & After」  データ分析している側か...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
電子メール、簡潔過ぎると逆効果

◆電子メール:多忙な人に確実な返信をもらうテクニック  皆様は仕事で電子メールを一日に何通受信しますか、企業の従業員数、所属部署、職務、職位などでも...

◆電子メール:多忙な人に確実な返信をもらうテクニック  皆様は仕事で電子メールを一日に何通受信しますか、企業の従業員数、所属部署、職務、職位などでも...


システムトラブル、誰に相談したら良いか

 最近は、以下のように情報システム開発にかかわるトラブルに悩まされる企業が急増しています。ところが、トラブルが起きた時に誰に相談したらいいかわからなくて困...

 最近は、以下のように情報システム開発にかかわるトラブルに悩まされる企業が急増しています。ところが、トラブルが起きた時に誰に相談したらいいかわからなくて困...


ソフトウェア特許とは(その2)

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...