クリーン化4原則-1 クリーン化について(その26)

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 連載のその16で『クリーン化4原則+監視』を述べました。今回から、図1のクリーン化4原則について個別に解説します。

 クリーン化

図1. クリーン化4原則

 

 元々はクリーンルームのことを対象にしているので、“クリーンルームの4原則”と表現する場合もありますが、私は、もう少し広義にとらえ、クリーン化としています。2000年に赴任した山形県の工場では、クリーンルームではない作業エリアからも指導要請がありました。その頃から、やがてこういう時が来るんだろうと思い、要請があれば積極的に診断・指導・アドバイスを行っていました。これまでの体験や経験からクリーンルームの有無に関係なく、基本的な考え方は相互に活用できると考えているからです。

 せっかくクリーンルーム(乱流式)を保有していても、管理方法を知らないとか、きちんと管理をしていないとお金がかかる割に効果は出ません。逆にクリーンルームを保有していないところでも、クリーン化の知識を持ちきちんと管理すれば、そのような現場よりも良い環境を作ることも可能だと考えています。そうなると、お金がかからないだけでなく、品質も向上するため安価なものづくりに貢献できます。

 このような背景もあって、クリーン化セミナーでも、“クリーンルームの有無に関わらず、クリーン化の基礎を学ぶこと”の重要さに触れています。ものづくりの幅広い分野で活用していただきたいと思います。そのクリーン化4原則は、次の4つです。この括弧の部分を外せば、クリーンルームではないものづくりエリアでも活用・応用できます。

  1. (クリーンルームには)ゴミを持ち込まない
  2. (クリーンルームの中では、ゴミを発生させない
  3. (クリーンルームの中で)ゴミを堆積させない
  4. (クリーンルームから)ゴミを排除する 

 

1. ゴミを持ち込まない

 今回は4項目の中から「ゴミを持ち込まない」について、ポイントとなる部分を説明します。

【入室ルールの徹底】

 入室ルールはあるか。またそれを理解して守っていますか、ということです。

 いくらクリーンルーム内を清掃しても、外からゴミを持ち込んで(供給して)いれば、綺麗(きれい)になりません。その持ち込んでいるゴミが見えないので油断してしまいがちですが、まずそのことを知り、入り口を抑えることが必要です。さまざまな場面を考え、ルールを作る。予想外のことも出てくるかも知れませんが、一旦決めたらそのままではなく、ルールを見直し、使えるものにしていくことです。作業標準書と同じ考え方です。これを守ってもらえるよう指導することが重要です。“ルールはあるけど、守るかどうかは別だ”ということにならないようにしてください。

 

【防塵衣への着替え、エアシャワーの浴び方】

 クリーンルームに入るには、防塵(ぼうじん)衣を着用します。そしてエアシャワーを浴び、付着したゴミを落とします。そのエアシャワーの浴び方について説明します。

クリーン化

図2. エアシャワーの浴び方とシャワー室のパーティクル数

 図2の左上写真は浴び方の悪い例です。

 内壁に寄りかかっています。内壁は良く観察すると目視でも埃(ほこり)などが付着しているのが分かります。これを防塵衣に押し付け付着させてしまうため、そのままクリーンルームに持ち込んでしまい、様々な動作や行動で落下、または浮遊させてしまいます。また、寄りかかることでジェットエアー(以下ジェットと略す)の吹き出し口を塞いでしまい、背中の部分には風が当たらないだけでなく、気流の乱れも起きます。

 左下の写真は、エアシャワーを浴びる時、ただ立っているのではなく、ゆっくり回転しましょうという説明です。

 立ったままの状態では、ジェットが防塵衣に当たっても、付着ゴミがその風で押さえつけられているだけになります。また、その陰になる部分には風も当たらず、ゴミを落とすことができません。そこで、ゆっくり回転することが良いという説明です。回転することで、防塵衣に平均的に風が当たることに加え、風の当たる角度も変わります。完全には取れなくても、付着しているゴミを少しでも多く剥(は)ぎ取ろうという考え方です。

 エアシャワーのジェットの吹き出し時間は、15秒~20秒くらいに設定しているところが多いようですが、もう少し長く設定しているところもあります。エアシャワーを浴びた後、専用のコロコロ(ゴミ取りローラー)を使って、取り切れていないゴミを除去する。あるいは万歳をしながら回転している例もあります。脇の下の部分にも風を当てようという考え方です。

 次に図2の右の棒グラフは、エアシャワー内でジェットが15秒間吹き出した時のパーティクル量を測定したものです。エアシャワーによりパーティクルの量に違いがありますが、2回測定しても同じ傾向がありました。ジェットの吹き出し時は、パーティクルの量は異常に多いのが分かります。ジェットの吹き出し終了直後、すぐドアを開けると、この浮遊している大量のパーティクルを一緒に持ち込むことになります。

 クリーン化

図3.エアシャワーのジェット停止後のパーティクル推移

 

 ここで、エアシャワーのジェット停止後、5秒間はその場で待機することが重要です。図3のグラフは乱流式クリーンルーム入室前のエアシャワーで、ジェット停止後5秒ずつのパーティクル数を調べたものです。誰も入っていない時でも、僅(わず)かに浮遊しているものがあります(BG=バックグラウンドと記した)。そのあとはジェット停止後5秒間のパーティクル数です。

 停止後5秒間のパーティクル量は異常に多いのです。その後の5秒間ごとのパーティクルは極端に減少します。エアシャワー室上部から出る僅かな風(エアカーテン)で浮遊しているパーティ...

 

 

 連載のその16で『クリーン化4原則+監視』を述べました。今回から、図1のクリーン化4原則について個別に解説します。

 クリーン化

図1. クリーン化4原則

 

 元々はクリーンルームのことを対象にしているので、“クリーンルームの4原則”と表現する場合もありますが、私は、もう少し広義にとらえ、クリーン化としています。2000年に赴任した山形県の工場では、クリーンルームではない作業エリアからも指導要請がありました。その頃から、やがてこういう時が来るんだろうと思い、要請があれば積極的に診断・指導・アドバイスを行っていました。これまでの体験や経験からクリーンルームの有無に関係なく、基本的な考え方は相互に活用できると考えているからです。

 せっかくクリーンルーム(乱流式)を保有していても、管理方法を知らないとか、きちんと管理をしていないとお金がかかる割に効果は出ません。逆にクリーンルームを保有していないところでも、クリーン化の知識を持ちきちんと管理すれば、そのような現場よりも良い環境を作ることも可能だと考えています。そうなると、お金がかからないだけでなく、品質も向上するため安価なものづくりに貢献できます。

 このような背景もあって、クリーン化セミナーでも、“クリーンルームの有無に関わらず、クリーン化の基礎を学ぶこと”の重要さに触れています。ものづくりの幅広い分野で活用していただきたいと思います。そのクリーン化4原則は、次の4つです。この括弧の部分を外せば、クリーンルームではないものづくりエリアでも活用・応用できます。

  1. (クリーンルームには)ゴミを持ち込まない
  2. (クリーンルームの中では、ゴミを発生させない
  3. (クリーンルームの中で)ゴミを堆積させない
  4. (クリーンルームから)ゴミを排除する 

 

1. ゴミを持ち込まない

 今回は4項目の中から「ゴミを持ち込まない」について、ポイントとなる部分を説明します。

【入室ルールの徹底】

 入室ルールはあるか。またそれを理解して守っていますか、ということです。

 いくらクリーンルーム内を清掃しても、外からゴミを持ち込んで(供給して)いれば、綺麗(きれい)になりません。その持ち込んでいるゴミが見えないので油断してしまいがちですが、まずそのことを知り、入り口を抑えることが必要です。さまざまな場面を考え、ルールを作る。予想外のことも出てくるかも知れませんが、一旦決めたらそのままではなく、ルールを見直し、使えるものにしていくことです。作業標準書と同じ考え方です。これを守ってもらえるよう指導することが重要です。“ルールはあるけど、守るかどうかは別だ”ということにならないようにしてください。

 

【防塵衣への着替え、エアシャワーの浴び方】

 クリーンルームに入るには、防塵(ぼうじん)衣を着用します。そしてエアシャワーを浴び、付着したゴミを落とします。そのエアシャワーの浴び方について説明します。

クリーン化

図2. エアシャワーの浴び方とシャワー室のパーティクル数

 図2の左上写真は浴び方の悪い例です。

 内壁に寄りかかっています。内壁は良く観察すると目視でも埃(ほこり)などが付着しているのが分かります。これを防塵衣に押し付け付着させてしまうため、そのままクリーンルームに持ち込んでしまい、様々な動作や行動で落下、または浮遊させてしまいます。また、寄りかかることでジェットエアー(以下ジェットと略す)の吹き出し口を塞いでしまい、背中の部分には風が当たらないだけでなく、気流の乱れも起きます。

 左下の写真は、エアシャワーを浴びる時、ただ立っているのではなく、ゆっくり回転しましょうという説明です。

 立ったままの状態では、ジェットが防塵衣に当たっても、付着ゴミがその風で押さえつけられているだけになります。また、その陰になる部分には風も当たらず、ゴミを落とすことができません。そこで、ゆっくり回転することが良いという説明です。回転することで、防塵衣に平均的に風が当たることに加え、風の当たる角度も変わります。完全には取れなくても、付着しているゴミを少しでも多く剥(は)ぎ取ろうという考え方です。

 エアシャワーのジェットの吹き出し時間は、15秒~20秒くらいに設定しているところが多いようですが、もう少し長く設定しているところもあります。エアシャワーを浴びた後、専用のコロコロ(ゴミ取りローラー)を使って、取り切れていないゴミを除去する。あるいは万歳をしながら回転している例もあります。脇の下の部分にも風を当てようという考え方です。

 次に図2の右の棒グラフは、エアシャワー内でジェットが15秒間吹き出した時のパーティクル量を測定したものです。エアシャワーによりパーティクルの量に違いがありますが、2回測定しても同じ傾向がありました。ジェットの吹き出し時は、パーティクルの量は異常に多いのが分かります。ジェットの吹き出し終了直後、すぐドアを開けると、この浮遊している大量のパーティクルを一緒に持ち込むことになります。

 クリーン化

図3.エアシャワーのジェット停止後のパーティクル推移

 

 ここで、エアシャワーのジェット停止後、5秒間はその場で待機することが重要です。図3のグラフは乱流式クリーンルーム入室前のエアシャワーで、ジェット停止後5秒ずつのパーティクル数を調べたものです。誰も入っていない時でも、僅(わず)かに浮遊しているものがあります(BG=バックグラウンドと記した)。そのあとはジェット停止後5秒間のパーティクル数です。

 停止後5秒間のパーティクル量は異常に多いのです。その後の5秒間ごとのパーティクルは極端に減少します。エアシャワー室上部から出る僅かな風(エアカーテン)で浮遊しているパーティクルを強制的に沈降させるためです。

 別なエアシャワーを調べても、数字は違いますが、同じ傾向です。このジェット停止直後に直ぐにエアシャワーのドアを開け、クリーンルームに入ると、人の後について流れ込む気流が発生し、それに乗って浮遊しているパーティクルが持ち込まれるわけです。この5秒間だけでもカットすることが重要です。

 そこで、ジェット停止後5秒間待たせるために、ドアがロックされるとか、その間メロディーが鳴って待たせるなどしているところがあります。この待機時間をもう少し長く設定しているところもあります。このような待たせるための仕組みがなくても、きちんと待つことをルールに入れましょう。

 自動ドアの場合は、ジェット停止後少し遅れてドアが開くようになっています。エアシャワーを浴びる時、なぜ待機時間があるのかを理解させましょう。また、ジェットの吹き出しではフラッタータイプというものがあります。これは、吹き出しノズルがなく、壁面に縦長、横長の四角い穴が開いているもので、この穴から波のように繰り返し風が出てきます。その波で防塵衣を軽くゆすりゴミを落とす考え方です。いずれも待機する考え方は同じです。

 

 次回に続きます。

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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