予測と事実と感想 データ分析講座(その236)

更新日

投稿日

データ分析

 

議論や報告書などで、何かしらの事実(ファクト)を元にしているのか、予測した結果(もしくは推論した結果)から導き出したものなのか、単なる感想なのか、よく分からないことがあります。受け手(聞き手や読み手など)は、常に元になった事実(ファクト)が何なのか意識したほうがいいでしょうし、送り手(話し手や書き手など)は、常に明確に分かるようにしたほうがいいでしょう。今回は、「予測と事実と感想」というお話しをします。

 

【目次】
1.事実と感想
2.仮説思考
3.予測というややこしいモノ
4.要は分けよう

 

【この連載の前回:データ分析講座(その235)ホメオスタシスな現場を動かすのは大変へのリンク】

 

1.事実と感想

昔から、事実(客観的な何か)と感想(主観的な何か)を明確に分けて、報告書を書きましょう! とは言われたものです。事実(ファクト)には、客観性の高い数値などの裏付けがあります。例えば、数値的な裏付けを確認することなく、「日本人の中学1年生の身長は明治時代にくらべ増えている」というのは、単なる感想というか主観です。

 

一方、文部科学省「学校保健統計調査」の結果を知っていて、「日本人の中学1年生の身長は、明治時代にくらべ増えている」、というのは客観性の高い数値などの裏付けのある事実(ファクト)です。

 

日本人男性12歳(中1)の平均身長

明治33年:133.9cm
令和2年:154.3cm

日本人女性12歳(中1)の平均身長

明治33年:133cm

令和2年:152.6cm

 【出典】文部科学省「学校保健統計調査」から

 

この事実(ファクト)を数値的な裏付けなく言及すれば、それは感想というか主観に過ぎないということです。たまたま、感想(主観的な何か)を調べてみたら、数値的な裏付けがあった、ということはあるかもしれませんが、数値的な裏付けのないまま述べれば、それは単なる感想(主観的な何か)です。

 

2.仮説思考

先ほど、数値的な裏付けを確認することなく、「日本人の中学1年生の身長は明治時代にくらべ増えている」というのは、単なる感想というか主観だ、ということを述べました。この単なる感想(主観的な何か)は、「仮説」と言い換えることが出来てます。仮説ですから、後で裏付けを確かめる必要が出てきます。

 

仮説の裏付けを取るとき、2方向から情報と言うかデータを集める必要があります。

  • 仮説を肯定する情報やデータなど
  • 仮説を否定する情報やデータなど

 

多くの人は、仮説の裏付けを取るとき、仮説を肯定する都合のよい情報と言うかデータを集めようとします。そうすると、都合のいいものだけを集め、臭い物に蓋をすると言うか、臭い物を見ない、寄り付かない、無かったことになる、という感じになり可笑しなことになります。ですので、仮説にとって都合の悪い情報と言うかデータも積極的に集めます。そうすることで、仮説が成り立つ前提条件のようなものが見えてきます。

 

3.予測というややこしいモノ

最近、データを使った統計処理や機械学習による予測などが実施されるケースも増えてきました。ここでは、予測にデータから導き出した推論も含めて議論します。この推論とは、例えば統計的推測(推定と検定、因果推論など)などです。ですので、ここで言っている予測には「未来予測だけでない」ということです。

 

先ほどの日本人の身長の例のように、客観的なデータから直接言及できる場合と異なり、統計処理や機械学習による予測などの場合、注意が必要です。なぜならば、統計処理や機械学習による予測などは、データを使っているため客観性が高そうに見えますが、実は人間の介在する余地が大きく、客観性が薄れます。

 

例えば、統計処理で有名な相関係数などは、一見すると因果関係のような錯覚を受けますが、実際はそうではありません。因果のようなものを検討する際のツールに過ぎません。機械学習によ...

データ分析

 

議論や報告書などで、何かしらの事実(ファクト)を元にしているのか、予測した結果(もしくは推論した結果)から導き出したものなのか、単なる感想なのか、よく分からないことがあります。受け手(聞き手や読み手など)は、常に元になった事実(ファクト)が何なのか意識したほうがいいでしょうし、送り手(話し手や書き手など)は、常に明確に分かるようにしたほうがいいでしょう。今回は、「予測と事実と感想」というお話しをします。

 

【目次】
1.事実と感想
2.仮説思考
3.予測というややこしいモノ
4.要は分けよう

 

【この連載の前回:データ分析講座(その235)ホメオスタシスな現場を動かすのは大変へのリンク】

 

1.事実と感想

昔から、事実(客観的な何か)と感想(主観的な何か)を明確に分けて、報告書を書きましょう! とは言われたものです。事実(ファクト)には、客観性の高い数値などの裏付けがあります。例えば、数値的な裏付けを確認することなく、「日本人の中学1年生の身長は明治時代にくらべ増えている」というのは、単なる感想というか主観です。

 

一方、文部科学省「学校保健統計調査」の結果を知っていて、「日本人の中学1年生の身長は、明治時代にくらべ増えている」、というのは客観性の高い数値などの裏付けのある事実(ファクト)です。

 

日本人男性12歳(中1)の平均身長

明治33年:133.9cm
令和2年:154.3cm

日本人女性12歳(中1)の平均身長

明治33年:133cm

令和2年:152.6cm

 【出典】文部科学省「学校保健統計調査」から

 

この事実(ファクト)を数値的な裏付けなく言及すれば、それは感想というか主観に過ぎないということです。たまたま、感想(主観的な何か)を調べてみたら、数値的な裏付けがあった、ということはあるかもしれませんが、数値的な裏付けのないまま述べれば、それは単なる感想(主観的な何か)です。

 

2.仮説思考

先ほど、数値的な裏付けを確認することなく、「日本人の中学1年生の身長は明治時代にくらべ増えている」というのは、単なる感想というか主観だ、ということを述べました。この単なる感想(主観的な何か)は、「仮説」と言い換えることが出来てます。仮説ですから、後で裏付けを確かめる必要が出てきます。

 

仮説の裏付けを取るとき、2方向から情報と言うかデータを集める必要があります。

  • 仮説を肯定する情報やデータなど
  • 仮説を否定する情報やデータなど

 

多くの人は、仮説の裏付けを取るとき、仮説を肯定する都合のよい情報と言うかデータを集めようとします。そうすると、都合のいいものだけを集め、臭い物に蓋をすると言うか、臭い物を見ない、寄り付かない、無かったことになる、という感じになり可笑しなことになります。ですので、仮説にとって都合の悪い情報と言うかデータも積極的に集めます。そうすることで、仮説が成り立つ前提条件のようなものが見えてきます。

 

3.予測というややこしいモノ

最近、データを使った統計処理や機械学習による予測などが実施されるケースも増えてきました。ここでは、予測にデータから導き出した推論も含めて議論します。この推論とは、例えば統計的推測(推定と検定、因果推論など)などです。ですので、ここで言っている予測には「未来予測だけでない」ということです。

 

先ほどの日本人の身長の例のように、客観的なデータから直接言及できる場合と異なり、統計処理や機械学習による予測などの場合、注意が必要です。なぜならば、統計処理や機械学習による予測などは、データを使っているため客観性が高そうに見えますが、実は人間の介在する余地が大きく、客観性が薄れます。

 

例えば、統計処理で有名な相関係数などは、一見すると因果関係のような錯覚を受けますが、実際はそうではありません。因果のようなものを検討する際のツールに過ぎません。機械学習による予測なども、どのようなアルゴリズムで予測モデルを構築するかで、予測モデルそのものも異なりますし予測結果も異なります。

 

予測結果を事実(ファクト)のごとく扱うのは言語道断です。このような予測というモノは、非常にややこしいモノで、データを使っているがために事実(ファクト)のようにも見えますが、実はそうではないく、人的要素が存分にブレンドされたものに過ぎません。

 

4.要は分けよう

要するに、予測と事実と感想は、明確に分けて考えた方が良いということです。受け手(聞き手や読み手など)も送り手(話し手や書き手など)も、常に意識して分けた方がいいでしょう。結構、ごっちゃになっているケースを最近目にします。

 

次回に続きます。

 

◆データ分析講座の注目記事紹介

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
データの活かしどころを具体化することの重要性 データ分析講座(その49)

  ◆ データ活用の成否に企業規模は関係ないが、成功確率に差がある理由  数年前に統計学やビッグデータというキーワードが注目され、今では機械...

  ◆ データ活用の成否に企業規模は関係ないが、成功確率に差がある理由  数年前に統計学やビッグデータというキーワードが注目され、今では機械...


データをどのように見える化すると、どんなメリットがあるのか:データ分析講座(その342)

【目次】   国内最多のものづくりに関するセミナー掲載中! ものづくりドットコムでは、製造業に関するセミナーを常時...

【目次】   国内最多のものづくりに関するセミナー掲載中! ものづくりドットコムでは、製造業に関するセミナーを常時...


データ活用の見通しを明るくするには データ分析講座(その47)

◆ データを活用した大いなる成功になるかどうかの成否を分ける、一つの質問とは  ビッグデータが騒がれて大分たちます。不思議なことに、派生した用語(デ...

◆ データを活用した大いなる成功になるかどうかの成否を分ける、一つの質問とは  ビッグデータが騒がれて大分たちます。不思議なことに、派生した用語(デ...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
‐販路開拓に関する問題事例‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その19)

 前回の事例その18に続いて解説します。多額の資金と労力を費やして開発した知的財産をどのように活用して販路開拓に結びつけるのか、大変重要な問題ですが、販売...

 前回の事例その18に続いて解説します。多額の資金と労力を費やして開発した知的財産をどのように活用して販路開拓に結びつけるのか、大変重要な問題ですが、販売...


ソフトウェア特許とは(その2)

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...


簡易版DX/IoTから機械学習への移行

  ◆ DX(デジタル・トランスフォーメーション)を使えばコスト削減と納期短縮が可能に  産業界のニュースなどをインターネットで読んでいると...

  ◆ DX(デジタル・トランスフォーメーション)を使えばコスト削減と納期短縮が可能に  産業界のニュースなどをインターネットで読んでいると...