◆ データ分析に立ちはだかる実践・活用の壁
データ分析をやることになった時、多くの人は分析手法の知識やツールの使い方を学ぶようです。当然と言えば当然ですが、それだけでは実務で活用し、ビジネス成果を出すことは難しいでしょう。
どのくらい難しいのかというと、高校や大学などの高等教育で得たことを、実社会で活用するぐらいの難しさです。これは多くの人が経験する、データ分析に立ちはだかる実践・活用の壁です。今回は「データ分析手法の知識やツールの使い方を学んだだけで成果を出すのは無茶」というお話しをします。
1. どのようなデータで、どのような分析をすればいいのか
私は次のような質問をよくされます。「どのようなデータで、どのような分析をすればいいの?」。このように質問する気持ちも分かります。しかしこのような質問が一番困ります。なんて答えればいいのか分からないからです。
(1) データ分析は料理と同じ
データ分析は、よく「料理」に例えられます。データが「食材」で、分析が「調理」です。料理の場合、次のような質問になります。「どのような食材で、どのような調理をすればいいの?」。このような質問をプロの料理人にしても困ってしまうことでしょう。なぜでしょうか。
(2) 何の料理のことを指しているのか分からない
理由は簡単で、何の料理を指しているのか分からないからです。
カレーライスのことを指しているのか、ハンバーグのことを指しているのか、チンジャオロースーのことを指しているのかで、当然ながら食材も調理法も変わっていきます。例えば「4歳の牛乳アレルギーと小麦アレルギーのある男の子でも美味(おい)しく食べられるカレーライス」とでも言ってもらえれば、答えようがあります。
2. 手法の知識やツールを学んだだけで成果を出せという無茶
データ分析手法の知識や分析ツールの使い方を学ぶことは、料理に例えると、料理法の知識と調理器具の使い方を学んでいるに過ぎません。料理法の知識と調理器具の使い方を学んだだけで、美味しい料理を作り、成果を出せというのは無茶苦茶です。データ分析手法も同様で、知識や分析ツールの使い方を学んだだけで、社内の「お困りごと」であるビジネス課題を解決し、成果を出せというのは無茶な話です。
(1) 何が必要なのか
それでは何が必要なのでしょうか。答えは簡単で実践・活用のイメージです。料理で例えると「どのようなシーン」で「どのような料理」を「どのような人」に提供し「どのように喜んでもらうのか」といったイメージです。
(2) 必要なのは実務経験
多くの場合、実務経験が必要です。
データ分析に限らず多くの職場では、実践的な教育法としてOJT(On-the-Job Training)が主流なのでしょう。OJTとは、職場で実務をさせる職業教育・訓練法の一つで、実務を通じて知識やスキルなどを身に着けさせようとするものです。OJTには、当然ながらデータ分析でビジネス成果を出し続けているプロが必要になります。昔から、データ分析・活用の盛んな会社や部署であれば問題ないかもしれません。
そうでない場合、どうすればいいのでしょうか。
(3) 再現トレーニング
実践・活用のイメージを含まらせるトレーニング法は、OJT以外にはないのですようか。
私が20代のころ実践したやり方があります。それは、過去のデータ分析を活用するもので、報告書などに沿って最初からデータを整備して集計・分析し、モデル構築などを行ってから再現するというトレーニング方法です。この時、報告書も最初から自分で作成し再現しました。
これは、OJTだけでは物足りなかった私が実践した方法です。
(4) 報告書を読むだけでは実感を得ることができない
OJTで経験できるプロジェクト数には限りがあります。
私は、より多くの経験値を積むために実施しました。もしかしたら「過去のプロジェクトの報告書を読むだけで十分ではないのか」と、思った方もいるかもしれません。私も最初、そのように思いました。
しかし報告書を読むだけでは、表面をなぞっただけで、実践・活用のイメージを含まらせるようにはなりませんでした。なぜならば、単に過去事例を知っただけで、実感を得ることができなかったからです。
料理で例えると「あるお店でどの時期にどのメニューを出したのか」ということを覚えたという感じです。得たいのは、表面上の知識ではなく、どのように作ったのか、ということです。
(5) 手作業での再現
そのため、報告書などに沿って最初からデータを整備して集計・分析し、モデル構築などを行ってから再現するということを始めました。
先ほども述べましたが、報告書そのものも最初から自分で作成し再現しました。写経に過ぎないと思われるかもしれませんが、そこから得られるものは非常に多く、なぜこのような分析を実施したのか、分析結果をどのように表現することで物事を動かすことができたのか、など色々なことを得ることができたのです。
要するに、単に過去のプロジェクトの報告書資料を読むだけでは得られないものが、手を動かして再現することで、その意図とするところが理解できたのです。
なぜこのようにデータを整備したのか、なぜその集計をしたのか、なぜこのモデルを構築したのか、そして、そのことを説明するために、どのようにグラフ化し表現し、どのような順番で説明したのか、などです。
しかしデータ分析・活用の盛んな会社や部署でない場合、その道のプロがいないだけでなく、過去のデータ分析を活用したプロジェクトが十分でないケースも多いでしょう。
3. 分析の基本は、結局のところ比較にある
身近なところにデータ分析でビジネス成果を出し続けているプロがあまりおらず、過去のデータ分析を活用したプロジェクトが十分でない場合、どうすればいいのでしょうか。
私は「分析の基本は、結局のところ比較にある」ということに気が付きました。もちろん、分析の基本は「比較」だけではありませんし「比較」だけが重要なわけでもありません。
実務で「比較」だけできればいいというわけでもありませんし「比較」で十分なデータ分析・活用ができるわけではありません。
4. 「比較」というキーワードでチャレンジしてみよう!
しかしデータ分析を活用するといったとき、「比較」という一つの考え方を実務で実践できるようになることで「データ分析に立ちはだかる実践・活用の壁」を乗り越えるきっかけになり得ます。
OJTには、当然ながらデータ分析でビジネス成果を出し続けているプロが必要になります。過去のデータ分析を活用したプロジェクトから学ぶには、十分なプロジェクト数が必要です。
身近なところにプロがあまりおらず、過去のデータ分析を活用したプロジェクトが十分でない状況下で、あなたが「データ分析に立ちはだかる実践・活用の壁」にぶち当たっているのなら「比較」というキーワードでチャレンジしてみてください。
5. 今回のまとめ
今回は「データ分析手法の知識やツールの使い方を学んだだけで成果を出...