顧客のチャーン予測(離反予測) データ分析講座(その250)

投稿日

データ分析

 

よくあるデータ活用のテーマの1つに、顧客のチャーン予測(離反予測)というものがあり、離反率をはじき出すことができます。離反率は、顧客満足度の重要な指標です。離反率が低いということは、顧客が満足しているということです。通常、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストより大きくなります。最大で5倍とも言われています。そのため、離反率を下げることは、利益にとって大きなプラスの影響を与えます。今回は「機械学習と相性のいい顧客のチャーン予測(離反予測)」というお話しをします。

 

【目次】
1. チャーン予測(離反予測)は重要
  (1) 2つのチャーン
  (2) 4つのMRR変化
2. チャーン予測(離反予測)モデルの2つのシチュエーション
3. チャーン予測(離反予測)モデルを構築し活用するまでの流れ

 

【この連載の前回:データ分析講座(その249)2つの市場反応分析へのリンク】

 

1. チャーン予測(離反予測)は重要

最近、サブスクリプション系サービスが流行っています。このようなビジネスモデルの場合、チャーン予測(離反予測)をすることは、特に重要です。

 

チャーン予測(離反予測)をすることで、CLTV(顧客生涯価値)を見積もったり、事業の成長性を測ることができるからです。また、チャーン予測(離反予測)から、適切なリテンション戦略(顧客維持戦略)につなげることができます。

 

先程も言いましたが、通常、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストより大きくなります。より高収益なビジネスを目指す上で、非常に重要になってきます。

 

(1) 2つのチャーン

チャーンには2種類あります。

 

  • 顧客チャーン(例:月間離反顧客数÷月初顧客数)
  • 収益チャーン(例:月間減益MRR÷月初MRR)

 

顧客チャーンとは、顧客がサブスクリプションなどのサービスを解約したりすることです。収益チャーンとは、例えば月初の月次経常収益MRR(Monthly Recurring Revenue)の損失のことです。

 

顧客離反がなくても、顧客がダウングレード(下位のサービス・商品への変更)すると、収益チャーンが起こります。イメージとしては、収益チャーンの方が、顧客チャーンよりも幅広い概念です。

 

(2) 4つのMRR変化

月次経常収益MRR(Monthly Recurring Revenue)の概念に不慣れな方もいると思いますので、補足説明します。

 

以下の4つのMRR変化があり、それぞれに対し名称がついています。

 

  • New MRR:新規顧客からもたらされるMRR
  • Expansion MRR:取引額の増えた既存顧客から得られるMRR
  • Downgrade MRR:取引額の減った既存顧客から得られるMRR
  • Churn MRR:離反顧客から得られたであろうMRR

 

さらに2つに分類できます。

 

  • 増益MRR:New MRR + Expansion MRR
  • 減益MRR:Downgrade MRR + Churn MRR

 

この比をQuick Ratioと言い、成長性を測る指標として用いることがあります。

 

  • Quick Ratio = 増加MRR ÷ 減少MRR

 

Quick Ratioは、基準として「1」と「4」が用いられます。1未満だと対策が必要で、4以上だと素晴らしいとなります。

 

2. チャーン予測(離反予測)モデルの2つのシチュエーション

以上より、機械学習で作るチャーン予測(離反予測)モデルには、2つのシチュエーションがあります。

 

  • 完全なる離反(取引金額0)
  • ダウングレード(下位のサービス・商品への変更)

 

完全なる離反(取引金額0)の場合、「離反 or 継続」の2値分類問題になります。ダウングレード(下位のサービス・商品への変更)の場合、「ダウングレード or 維持」の2値分類問題になります。ただ、ダウングレード対象のサービスが複数ある場合には、多値分類問題となります。

 

3. チャーン予測(離反予測)モデルを構築し活用するまでの流れ

チャーン予測(離反予測)モデルを構築して、ビジネスで活用したい! と思われた方も多いことでしょう。これは、通常の機械学習のモデル構築と同じです。

 

① テーマ設定:ビジネス上の問題と達成すべき目標を定義します。モニタリング可能な指標でBefore→Afterを定義します。
 
② アナリティクス設計:構築したモデルと必要なデータを定義します。多くの場合、取引履歴やCRM(顧客関係管理)システムなどのデータです。
 
③ データ...

データ分析

 

よくあるデータ活用のテーマの1つに、顧客のチャーン予測(離反予測)というものがあり、離反率をはじき出すことができます。離反率は、顧客満足度の重要な指標です。離反率が低いということは、顧客が満足しているということです。通常、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストより大きくなります。最大で5倍とも言われています。そのため、離反率を下げることは、利益にとって大きなプラスの影響を与えます。今回は「機械学習と相性のいい顧客のチャーン予測(離反予測)」というお話しをします。

 

【目次】
1. チャーン予測(離反予測)は重要
  (1) 2つのチャーン
  (2) 4つのMRR変化
2. チャーン予測(離反予測)モデルの2つのシチュエーション
3. チャーン予測(離反予測)モデルを構築し活用するまでの流れ

 

【この連載の前回:データ分析講座(その249)2つの市場反応分析へのリンク】

 

1. チャーン予測(離反予測)は重要

最近、サブスクリプション系サービスが流行っています。このようなビジネスモデルの場合、チャーン予測(離反予測)をすることは、特に重要です。

 

チャーン予測(離反予測)をすることで、CLTV(顧客生涯価値)を見積もったり、事業の成長性を測ることができるからです。また、チャーン予測(離反予測)から、適切なリテンション戦略(顧客維持戦略)につなげることができます。

 

先程も言いましたが、通常、新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストより大きくなります。より高収益なビジネスを目指す上で、非常に重要になってきます。

 

(1) 2つのチャーン

チャーンには2種類あります。

 

  • 顧客チャーン(例:月間離反顧客数÷月初顧客数)
  • 収益チャーン(例:月間減益MRR÷月初MRR)

 

顧客チャーンとは、顧客がサブスクリプションなどのサービスを解約したりすることです。収益チャーンとは、例えば月初の月次経常収益MRR(Monthly Recurring Revenue)の損失のことです。

 

顧客離反がなくても、顧客がダウングレード(下位のサービス・商品への変更)すると、収益チャーンが起こります。イメージとしては、収益チャーンの方が、顧客チャーンよりも幅広い概念です。

 

(2) 4つのMRR変化

月次経常収益MRR(Monthly Recurring Revenue)の概念に不慣れな方もいると思いますので、補足説明します。

 

以下の4つのMRR変化があり、それぞれに対し名称がついています。

 

  • New MRR:新規顧客からもたらされるMRR
  • Expansion MRR:取引額の増えた既存顧客から得られるMRR
  • Downgrade MRR:取引額の減った既存顧客から得られるMRR
  • Churn MRR:離反顧客から得られたであろうMRR

 

さらに2つに分類できます。

 

  • 増益MRR:New MRR + Expansion MRR
  • 減益MRR:Downgrade MRR + Churn MRR

 

この比をQuick Ratioと言い、成長性を測る指標として用いることがあります。

 

  • Quick Ratio = 増加MRR ÷ 減少MRR

 

Quick Ratioは、基準として「1」と「4」が用いられます。1未満だと対策が必要で、4以上だと素晴らしいとなります。

 

2. チャーン予測(離反予測)モデルの2つのシチュエーション

以上より、機械学習で作るチャーン予測(離反予測)モデルには、2つのシチュエーションがあります。

 

  • 完全なる離反(取引金額0)
  • ダウングレード(下位のサービス・商品への変更)

 

完全なる離反(取引金額0)の場合、「離反 or 継続」の2値分類問題になります。ダウングレード(下位のサービス・商品への変更)の場合、「ダウングレード or 維持」の2値分類問題になります。ただ、ダウングレード対象のサービスが複数ある場合には、多値分類問題となります。

 

3. チャーン予測(離反予測)モデルを構築し活用するまでの流れ

チャーン予測(離反予測)モデルを構築して、ビジネスで活用したい! と思われた方も多いことでしょう。これは、通常の機械学習のモデル構築と同じです。

 

① テーマ設定:ビジネス上の問題と達成すべき目標を定義します。モニタリング可能な指標でBefore→Afterを定義します。
 
② アナリティクス設計:構築したモデルと必要なデータを定義します。多くの場合、取引履歴やCRM(顧客関係管理)システムなどのデータです。
 
③ データセット生成:データを準備しEDA(探索的データ分析)を実施したり、必要な前処理を実施したりし、機械学習アルゴリズムに適したデータセットを作ります。
 
④ 予測モデルの学習とテスト:分類問題の様々な機械学習アルゴリズムを用いチャーン予測(離反予測)モデルを学習します。学習した予測モデルはテストします。
 
⑤ デプロイとモニタリング:学習した予測モデルをデプロイ(現場で活用できる状態にする)します。予測モデルを活用した結果をモニタリングし効果検証します。

 

◆【特集】 連載記事紹介連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!

◆データ分析講座の注目記事紹介

 

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)


「情報マネジメント一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
DXはIT投資ではなく人財投資へ データ分析講座(その232)

  【この連載の前回:データ分析講座(その231)DXを阻む「鉛筆を舐めておけ文化」へのリンク】 ◆関連解説『情報マネジメントとは』 ...

  【この連載の前回:データ分析講座(その231)DXを阻む「鉛筆を舐めておけ文化」へのリンク】 ◆関連解説『情報マネジメントとは』 ...


ジョハリの窓とは データ分析講座(その128)

  ◆ データサイエンスを小さく始める時のテーマ選定は、ジョハリの窓  本題に入る前に、某大手食品企業のお話をしたいと思います。 データドリ...

  ◆ データサイエンスを小さく始める時のテーマ選定は、ジョハリの窓  本題に入る前に、某大手食品企業のお話をしたいと思います。 データドリ...


データによる効果検証とネクストアクション データ分析講座(その213)

  【この連載の前回へのリンク】 プロモーションを実施したとき、その効果を知りたくなるものです。例えば、A群とB群に分け、A群には従来の...

  【この連載の前回へのリンク】 プロモーションを実施したとき、その効果を知りたくなるものです。例えば、A群とB群に分け、A群には従来の...


「情報マネジメント一般」の活用事例

もっと見る
‐技術開発の目標について 第2回‐  製品・技術開発力強化策の事例(その16)

 技術開発の目標を解説する以下の項目4点について、前回は、1と2を解説しましたので、今回は、第2回として、3と4を記述します。          1....

 技術開発の目標を解説する以下の項目4点について、前回は、1と2を解説しましたので、今回は、第2回として、3と4を記述します。          1....


現場のExcel依存に注意しよう

 マイクロソフトの「Excel」は企業の業務遂行にとって欠かせないツールになりました。数字の集計、グラフの作成にとどまらず、作業伝票の発行、作業の管理、資...

 マイクロソフトの「Excel」は企業の業務遂行にとって欠かせないツールになりました。数字の集計、グラフの作成にとどまらず、作業伝票の発行、作業の管理、資...


ソフトウェア特許とは(その2)

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...

4.ソフトウェア特許のとり方    前回のその1に続いて解説します。    ソフトウェア特許の取得方法にはノウハウがあります。特許のことを知らない...