立場によって意味合いが異なる見える化 データ分析講座(その126)

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◆ 「データによる見える化」で見たいものが異なる人々

 データ分析・活用の第一歩として「見える化」というキーワードがあります。まずはデータを収集し現状を「見える化」するところから始めましょう。というものです。立場によって「見える化」の意味合いが異なることがあります。今回は「『データによる見える化』で見たいものが異なる人々」というお話をします。

(1) システム側

 システム担当者はデータを発生させ蓄積し、そのデータを加工・集計、何かしらの数値を表示させるシステムを構築することを「見える化」と言っていることでしょう。多くの人が持っているイメージもこちらに近いかもしれません。数値化さえすれば改善できると言わんばかりに、まずは数値が見えるようにしよう。といった感じです。

(2) マネジャー側

 管理層などのマネジャー側が見たいのは、現在どうなっていて、今後どうなりそうか、ということでしょう。しかも細かいことではなく、ざっくりとしたことを知りたいのです。プロセス寄りの成果です。例えば売上予算に対する現在の達成度合いや、このままいった時に売上予算を達成できそうなのか、達成できそうにない時の対策案と、対策を打った際の予算の達成度合い、対策案そのものの妥当性などでしょう。成果の実績と予測、そして対策案まで「見える化」したいのです。成果の実績と予測といった定量的なものだけでなく、対策案という定性的な未来まで見たいのです。

(3) 現場側

 現場側はどうでしょうか、データリテラシーに応じて異なってきます。システム側の考える「見える化」だけで、何が起こっているのかを把握し、今後の変化について予測を行い対策を打てる人もいます。一方で数値化されただけでは何が起こっているのかが分からず、ただ茫然と数値化された何かを眺めるだけで終わる人もいます。結局のところ、現場側で「見える化」したいのは、次に何をすべきかというアクションです。このアクションは、マネジャー側の見たい対策案よりも詳細化かつ具体化されたものです。要するに、現場の見たいものは「次のアクション」です。

2、模擬テスト結果と健康診断結果と財務諸表

 模擬テスト結果と健康診断結果と財務諸表はよく似ています。何かしらの数値がたくさん出てきます。つまり「見える化」された状態です。

(1) 模擬テスト結果

 その中で一番分かりやすいのは、模擬テスト結果でしょう。テストの点数や志望校への合格可能性の判定が「見える化」されているからです。問題はこの数値を見ただけで、次のアクションにつながるか、ということです。模擬テスト結果を見て次のアクションに繋げられる人もいれば、塾講師などのアドバイスをもらい次のアクションに繋げる人もいることでしょう。

(2) 健康診断結果

 次に分かりやすいのは、健康診断結果でしょう。何となくの健康状態と、精密検査を受けるべきかどうかが分かります。しかし細かく見てみると、専門家でないと分からない数値がたくさん掲載されています。要するに「見える化」されている数値だけ見ても普通の人には意味が分からないため次のアクションに移せる人は稀でしょう。

(3) 財務諸表

 財務諸表の数字を読み取るには、健康診断結果同様に専門的なリテラシーが必要でしょう。売り上げぐらいであれば何となく分かりますが、利益あたりで怪しくなる人も少なくありません。売上純利益や営業利益、経常利益、など「利益」と名のつく用語がわんさかと出てきます。また、管理会計まで広げてみると、限界利益や貢献利益など、新手の用語が登場してきます。「見える化」されていますといわれても「数字がたくさんありますね」と言うしかない状態です。これだけでは、次のアクションに繋がるのかというと難しく専門家の手が必要になります。

3、見たいのは「次のアクション」

 要するに「データで見える化」したいのは「次のアクション」だということです。

 単に「数値化されました」ではよろしくなく「何をすればいいのか分かりました」がいい状態ということです。ですので「数値化されました!」≒「何をすればいのか分かりました!」であれば問題はありません。しかし健康診断結果や財務諸表のように、数値で示されても、そもそもの数値の意味も分からず、具体的にどうすればいいのか見えてこない、とい...

データ分析

◆ 「データによる見える化」で見たいものが異なる人々

 データ分析・活用の第一歩として「見える化」というキーワードがあります。まずはデータを収集し現状を「見える化」するところから始めましょう。というものです。立場によって「見える化」の意味合いが異なることがあります。今回は「『データによる見える化』で見たいものが異なる人々」というお話をします。

(1) システム側

 システム担当者はデータを発生させ蓄積し、そのデータを加工・集計、何かしらの数値を表示させるシステムを構築することを「見える化」と言っていることでしょう。多くの人が持っているイメージもこちらに近いかもしれません。数値化さえすれば改善できると言わんばかりに、まずは数値が見えるようにしよう。といった感じです。

(2) マネジャー側

 管理層などのマネジャー側が見たいのは、現在どうなっていて、今後どうなりそうか、ということでしょう。しかも細かいことではなく、ざっくりとしたことを知りたいのです。プロセス寄りの成果です。例えば売上予算に対する現在の達成度合いや、このままいった時に売上予算を達成できそうなのか、達成できそうにない時の対策案と、対策を打った際の予算の達成度合い、対策案そのものの妥当性などでしょう。成果の実績と予測、そして対策案まで「見える化」したいのです。成果の実績と予測といった定量的なものだけでなく、対策案という定性的な未来まで見たいのです。

(3) 現場側

 現場側はどうでしょうか、データリテラシーに応じて異なってきます。システム側の考える「見える化」だけで、何が起こっているのかを把握し、今後の変化について予測を行い対策を打てる人もいます。一方で数値化されただけでは何が起こっているのかが分からず、ただ茫然と数値化された何かを眺めるだけで終わる人もいます。結局のところ、現場側で「見える化」したいのは、次に何をすべきかというアクションです。このアクションは、マネジャー側の見たい対策案よりも詳細化かつ具体化されたものです。要するに、現場の見たいものは「次のアクション」です。

2、模擬テスト結果と健康診断結果と財務諸表

 模擬テスト結果と健康診断結果と財務諸表はよく似ています。何かしらの数値がたくさん出てきます。つまり「見える化」された状態です。

(1) 模擬テスト結果

 その中で一番分かりやすいのは、模擬テスト結果でしょう。テストの点数や志望校への合格可能性の判定が「見える化」されているからです。問題はこの数値を見ただけで、次のアクションにつながるか、ということです。模擬テスト結果を見て次のアクションに繋げられる人もいれば、塾講師などのアドバイスをもらい次のアクションに繋げる人もいることでしょう。

(2) 健康診断結果

 次に分かりやすいのは、健康診断結果でしょう。何となくの健康状態と、精密検査を受けるべきかどうかが分かります。しかし細かく見てみると、専門家でないと分からない数値がたくさん掲載されています。要するに「見える化」されている数値だけ見ても普通の人には意味が分からないため次のアクションに移せる人は稀でしょう。

(3) 財務諸表

 財務諸表の数字を読み取るには、健康診断結果同様に専門的なリテラシーが必要でしょう。売り上げぐらいであれば何となく分かりますが、利益あたりで怪しくなる人も少なくありません。売上純利益や営業利益、経常利益、など「利益」と名のつく用語がわんさかと出てきます。また、管理会計まで広げてみると、限界利益や貢献利益など、新手の用語が登場してきます。「見える化」されていますといわれても「数字がたくさんありますね」と言うしかない状態です。これだけでは、次のアクションに繋がるのかというと難しく専門家の手が必要になります。

3、見たいのは「次のアクション」

 要するに「データで見える化」したいのは「次のアクション」だということです。

 単に「数値化されました」ではよろしくなく「何をすればいいのか分かりました」がいい状態ということです。ですので「数値化されました!」≒「何をすればいのか分かりました!」であれば問題はありません。しかし健康診断結果や財務諸表のように、数値で示されても、そもそもの数値の意味も分からず、具体的にどうすればいいのか見えてこない、という状態ではいけません。そのようにならないために、そのドメイン(データを活用する現場、営業の現場や生産の現場など)に特化したデータ分析者(もしくはデータサイエンティスト)が必要になります。

4、まとめ

 今回は「『データによる見える化』で見たいものが異なる人々」というお話をしました。どうしても「データによる見える化」となると、データを集めて集計し数値化することに注力されがちですが、本当に見たいのは「数値」ではありません。「データで見える化」したいのは「次のアクション」です。

 無駄なIT投資にしないためには、次のアクションの見える数値を、データで見えるようにすればいいのです。逆にデータで見える化した数値から、次のアクションが見えない場合、その数値化は考え直した方がいいでしょう。現場サイドが見たい数値、そしてその数値が提供されるタイミングは、現場の人間しか分かりません。既に「データによる見える化」に取り組んでいるものの、本当に活用され成果が出ているのか不安な方は、一度現場にヒアリングしてみることをお勧めします。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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