筋のいいテーマを選んでいないとは データ分析講座(その134)

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◆ データ分析:PoC(実証実験)貧乏

 日本ではいまだ大企業神話が根強いようですが、AI(人工知能)/データサイエンスの世界も同様です。一方で、人によっては古くからの大企業ほど上手くいっていない印象を持つ人もいることでしょう。他社のIT化を支援しているITベンダー企業やSier企業(システムインテグレーター)などの社員であれば、次のように感じているかもしれません。

 資金力にものを言わせ、多大なる投資をしPoC(実証実験)という名のトライアルを実施したものの、PoCで目立った成果が出ない。その先の実務活用にも進まず、例え進んだとしても現場にIT化の不効率をもたらす。今回は「PoC貧乏」というお話しをします(PoC:Proof of Concept)。



1、データ分析:とりあえずPoCだ!

 「とりあえずPoCだ!」という感じでトライアルはするけど、その先に進まず収益上良い方向に向いていない。もしくはPoC後、強引に先に進み、現場に混乱と面倒をもたらし、かけたコストの割にプラスの便益が少ないどころか、マイナスの便益しかない。要するに、コストに見合った何かを全く得ていないということです。大企業に多い印象です。もちろんこのようなチャレンジは悪いことではありません。

2、データ分析:IT化の不効率

 昔から、社内システムを高度にIT化したと思ったら、現場業務が不効率(マイナスの便益)になることがあります。私はこのような現象を「IT化の不効率」と呼んでいます。例えば社内申請システムを現場業務無視で作ったため、紙で申請していた時代は小一時間でできた申請が、なぜか半日かかってしまう。酷い場合だと1日かかる場合もあります。ある企業で調べてみると、システムの使い方や入力方法を現場のビジネスパーソンが分からず、その都度調べていることが分かりました。システムマニュアルを社内共有フォルダから探し読んだり、知っていそうな人に聞いたりしていたようです

3、データ分析:チャットボットを作ろう!

 そこで、入力支援AI(人工知能)という名の「チャットボットを作ろう!」となった企業があり、実際作りました。チャットボットとは、文章や音声を通じて会話を自動的に行うプログラムのことです。身近過ぎて、意識しないで生活している人も多いかもしれません。このチャットボットは優れもので、入力候補をレコメンドしてくれるのです。しかし現場では「うっとうしい」という理由で活用されないどころか「入力の邪魔で、逆に時間が掛かるから消してくれ」という要望が出るぐらいです。

 そもそものシステムに問題があるのだから、そこを変えれば済む話です。しかし不効率化したITシステムの一部をAI化したらより酷くなってしまった、という感じです。そのシステムを前提に、データを使ってどうにかしようと考えても限界があります。そもそも、多くの古くからあるIT系のシステムは、データ活用しやすいようには作られていません。そのためシステムからデータを取り出すのに一苦労し(社内調整やシステム上の制約など)、そのデータを分析できる状態にするのにさらに苦労(データのコンディションチェックや整備など)している感じです。

4、データ分析:データ活用しやすくする道具という魔力

 最近はデータ活用を前提にした、もしくはデータ活用しやすくする道具も出てきています。例えばBI(ビジネスインテリジェンス)、MA(マーケティングオートメーション)、RM/SFA(顧客管理システム/営業支援システム)、DMP(データマネジメントプラットフォーム)などです。

 しかし、このような道具はデータ活用した気分にさせるものの、実際は現場であまり活用できていないケースも多いようです。現場は無視しても実務に影響がないからです。その場合道具の使用料が垂れ流し状態になるため、ビジネス的にも良くありません。データ活用を推進し、利益を圧迫しているからです。

5、データ分析:財務諸表を見れば、データ活用の成否はすぐ分かる

 最近ではこのような道具を導入後1、2年経過したところで経営層が「財務諸表にポジティブなインパクトが無い」と気づくケースも見受けられます。データ活用が上手くいけば、財務諸表にポジティブなインパクトがあるからです。データ活用で売り上げが上がれば「売上高」が伸びますし、効率化やコストカットが上手くいけば「営業利益」や「事業貢献利益」などの利益も改善されます。悲観的な話しが続きましたが、もちろん活用し成果を出している企業もあります。

6、データ分析:筋のいいテーマを選んでいない

 データを活用して、思うような成果を出していない企業には、ある共通点があります。それは、IT投資が不十分であるとか、...

データ分析

◆ データ分析:PoC(実証実験)貧乏

 日本ではいまだ大企業神話が根強いようですが、AI(人工知能)/データサイエンスの世界も同様です。一方で、人によっては古くからの大企業ほど上手くいっていない印象を持つ人もいることでしょう。他社のIT化を支援しているITベンダー企業やSier企業(システムインテグレーター)などの社員であれば、次のように感じているかもしれません。

 資金力にものを言わせ、多大なる投資をしPoC(実証実験)という名のトライアルを実施したものの、PoCで目立った成果が出ない。その先の実務活用にも進まず、例え進んだとしても現場にIT化の不効率をもたらす。今回は「PoC貧乏」というお話しをします(PoC:Proof of Concept)。



1、データ分析:とりあえずPoCだ!

 「とりあえずPoCだ!」という感じでトライアルはするけど、その先に進まず収益上良い方向に向いていない。もしくはPoC後、強引に先に進み、現場に混乱と面倒をもたらし、かけたコストの割にプラスの便益が少ないどころか、マイナスの便益しかない。要するに、コストに見合った何かを全く得ていないということです。大企業に多い印象です。もちろんこのようなチャレンジは悪いことではありません。

2、データ分析:IT化の不効率

 昔から、社内システムを高度にIT化したと思ったら、現場業務が不効率(マイナスの便益)になることがあります。私はこのような現象を「IT化の不効率」と呼んでいます。例えば社内申請システムを現場業務無視で作ったため、紙で申請していた時代は小一時間でできた申請が、なぜか半日かかってしまう。酷い場合だと1日かかる場合もあります。ある企業で調べてみると、システムの使い方や入力方法を現場のビジネスパーソンが分からず、その都度調べていることが分かりました。システムマニュアルを社内共有フォルダから探し読んだり、知っていそうな人に聞いたりしていたようです

3、データ分析:チャットボットを作ろう!

 そこで、入力支援AI(人工知能)という名の「チャットボットを作ろう!」となった企業があり、実際作りました。チャットボットとは、文章や音声を通じて会話を自動的に行うプログラムのことです。身近過ぎて、意識しないで生活している人も多いかもしれません。このチャットボットは優れもので、入力候補をレコメンドしてくれるのです。しかし現場では「うっとうしい」という理由で活用されないどころか「入力の邪魔で、逆に時間が掛かるから消してくれ」という要望が出るぐらいです。

 そもそものシステムに問題があるのだから、そこを変えれば済む話です。しかし不効率化したITシステムの一部をAI化したらより酷くなってしまった、という感じです。そのシステムを前提に、データを使ってどうにかしようと考えても限界があります。そもそも、多くの古くからあるIT系のシステムは、データ活用しやすいようには作られていません。そのためシステムからデータを取り出すのに一苦労し(社内調整やシステム上の制約など)、そのデータを分析できる状態にするのにさらに苦労(データのコンディションチェックや整備など)している感じです。

4、データ分析:データ活用しやすくする道具という魔力

 最近はデータ活用を前提にした、もしくはデータ活用しやすくする道具も出てきています。例えばBI(ビジネスインテリジェンス)、MA(マーケティングオートメーション)、RM/SFA(顧客管理システム/営業支援システム)、DMP(データマネジメントプラットフォーム)などです。

 しかし、このような道具はデータ活用した気分にさせるものの、実際は現場であまり活用できていないケースも多いようです。現場は無視しても実務に影響がないからです。その場合道具の使用料が垂れ流し状態になるため、ビジネス的にも良くありません。データ活用を推進し、利益を圧迫しているからです。

5、データ分析:財務諸表を見れば、データ活用の成否はすぐ分かる

 最近ではこのような道具を導入後1、2年経過したところで経営層が「財務諸表にポジティブなインパクトが無い」と気づくケースも見受けられます。データ活用が上手くいけば、財務諸表にポジティブなインパクトがあるからです。データ活用で売り上げが上がれば「売上高」が伸びますし、効率化やコストカットが上手くいけば「営業利益」や「事業貢献利益」などの利益も改善されます。悲観的な話しが続きましたが、もちろん活用し成果を出している企業もあります。

6、データ分析:筋のいいテーマを選んでいない

 データを活用して、思うような成果を出していない企業には、ある共通点があります。それは、IT投資が不十分であるとか、人財がいないとか、そういうものではありません。非常に単純で「筋のいいテーマを選んでいない」からです。ただそれだけです。不思議なくらい、難しいテーマに挑む企業が多いです。ちょっと視線変えれば、比較的容易に大きな成果を出すことのできるテーマが転がっているのにです。

 最悪の場合、比較的容易なテーマなのに、データ活用の現場を無視し、テーマ自体を難しくしていることもあるようです。比較的容易なテーマとは、現場で成果が出やすいテーマを指しています。データが集まりやすく(もしくはすでにあり)、現場が受け入れてくれる上、実際に活用され、そして何かしらのビジネス的な成果(売上アップ、コストダウン、利益率向上など)を得られるということです。

7、今回のまとめ

 今回は「PoC貧乏」というお話しをしました。AI(人工知能)/データサイエンスの実務活用チャレンジの一つの形として、PoC(実証実験)というものがありますが、PoC貧乏という言葉があるように大企業ほど、この貧乏の罠にはまっている印象があります。データを活用して、思うような成果を出していない企業には「筋のいいテーマを選んでいない」という共通点がありました。

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この記事の著者

高橋 威知郎

データネクロマンサー/データ分析・活用コンサルタント (埋もれたデータに花を咲かせる、データ分析界の花咲じじい。それほど年齢は重ねてないけど)

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